(※写真はイメージです/PIXTA)

近畿大学世界経済研究所の客員教授で投資家・ストラテジストの菅下清廣氏は、日本で今後「史上最大のインフレ相場がやって来る」といいます。ではそのインフレ相場で「株価が上がる銘柄」と「株価が下がる銘柄」を見極めるには、企業のどこに着目すればよいのでしょうか。菅下氏が解説します。

10倍株のキーワードは「イノベーション」

日本郵船や日本製鉄の株価はなぜ上昇したのか。それは、社内のイノベーションに成功したか否かが大きな理由のひとつです。

 

社内のイノベーションと聞くと不思議に思われるかもしれません。しかしながら、いかなる企業も、社内的に大きな変革を起こし、旧態依然から脱皮した企業の株価が化けているのです。

 

これからの大相場で株価を押し上げるのは、大企業株であれ、新興株であれ、企業内にイノベーションが起こっている企業です。その見極めがきちんとできていれば、これから上がって来る「黄金株」をベストのタイミングでとらえることができます。

 

「日経ビジネス」的な表現をすれば、企業改革、企業革命が起こっている銘柄を買うのです。

 

実際、ディフェンシブ株(割安株)の代表ともいえる、日本製鉄、日本郵船、商船三井、川崎汽船などではイノベーションが起こっています。製鉄会社、海運会社が企業改革によって収益性の高い事業モデルに変身しているのです。そこに円安・インフレが加わり、大きなプラス効果となって現われたのです。

 

新たな事業モデルの具体例を以下にあげておきます。

 

■日本製鉄の場合…

日本製鉄は昭和電工や6つの国立大学と連携して、製鉄工程中の排気ガスから効率的に二酸化炭素を分離、回収する技術を開発。またJFEスチールや神戸製鋼所などと共同で、製鉄の過程で生じる水素を活用したプロジェクトが、経済産業省などが策定した「グリーンイノベーション基金事業」(注)に採択されました。

(注)グリーンイノベーション基金事業……基金の適正かつ効率的な執行に向けて、産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会において決定された「分野別資金配分方針」を踏まえ、同部会の下に設置された分野別ワーキンググループが、基金で実施するプロジェクトごとの優先度・金額の適正性等を審議する。その上で、担当省庁のプロジェクト担当課が、各プロジェクトの内容を「研究開発・社会実装計画」として策定し、洋上風力発電の低コスト化、次世代太陽電池の開発、製鉄プロセスにおける水素活用など20項目で順次公募を開始している。

 

■日本郵船の場合…

日本郵船は海運業界の労働者不足を補うため、「無人運航船」の実証実験に成功。内閣府主催の「第5回日本オープンイノベーション大賞・国土交通大臣賞」を受賞しています。

 

まったく新しいビジネスモデルを構築し、資金調達も可能にしている。新しくビジネスチャンスをものにして、業績が飛躍的に伸びている企業なのです。

 

東京証券取引所が、上場企業のコロナ禍前とコロナ禍後の利益の伸び率を調べたところ、最も利益の伸び率が高かったのは日本郵船でした。

 

日本経済新聞(2023年3月20日付)によると、2022年4〜12月期の最終損益は、コロナ流行前の2019年4〜12月期と比べた増減額で改善額は約9,000億円。利益で約50倍にもなっているのです。

 

イノベーションが成功した企業と成功していない企業、あるいはイノベーションを必要と考えず、何もしていない企業との差がはっきり出てきています。その意味でも、史上最大の資産インフレは格差をともなってやって来ることは間違いありません。

 

それがこれから起こる資産インフレの最大の特徴です。所得の格差だけでなく株価にも格差が拡がる、そういう時代が到来しているのです。

 

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※本連載は、菅下清廣氏による著書『2023-2024 資産はこの「黄金株」で殖やしなさい! 日本株大復活』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2023-2024 資産はこの「黄金株」で殖やしなさい! 日本株大復活

2023-2024 資産はこの「黄金株」で殖やしなさい! 日本株大復活

菅下 清廣

実務教育出版

ロシアのウクライナ侵攻によって石油・天然ガスなどエネルギー・素材価格が高騰。欧米では前年比10%超のインフレが続き、FRB(米国準備制度理事会)は利上げにかじを切った。 強硬な金融引締政策が行われた結果、コロナバブ…

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