いじめ発覚に時間を要し、証拠に乏しいが訴えたい
相談者のカノンさん(女性・仮名)は、小学校に通う子供がいじめにあっています。いじめの中身は、SNSに勝手に写真を使われたり、蹴られたり、倒されたり、物を壊されたりなどかなり酷い内容です。
壮絶ないじめは長く続いていたようですが、子供が隠していたため、相談者が把握するまでに時間がかかったそうです。
相談者としては、悪質な内容であり、隠し続けていた子供の気持ちも思い、いじめた相手には相応の代償を受けて欲しいと思っています。ただ、発覚までに時間を要したこともあり、証拠となる診断書や写真は存在しません。SNS上で使われた画像については保存してあるそうです。
相手は学校ですべてを認め、停学処分(出席停止・自宅謹慎)を受けはしました。それでもまだ、小さな嫌がらせは続いているそうです。
相手はいじめの事実を認めているものの、仮に民事や刑事で争うとなった場合、診断書などの証拠がないと難しいのか……。相談者はその点が気になっています。
そこで相談者は、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1) 証拠不十分で訴訟をすると、やはり分が悪いのか。SNS上の証拠だけでは弱いのか。
(2)相手はいじめを認めているが、訴訟となった場合、どのような影響があるのか。
いじめの裁判では学校の調査報告書がポイント
いじめ事案では、カノンさんのケースのように、学校や親に言いづらくて発覚が遅れることが少なくありません。そして、いじめが発覚したあとも、「学校に言えば大丈夫だろう」と考えて、裁判を見据えた準備が不十分となってしまうケースも見受けられます。
しかし、そのような場合でも、学校が、加害生徒や関係生徒に聞き取りなどの調査を行い、その結果を踏まえて調査報告書を作成しますので、これを証拠として裁判を行えば、有利な結果を期待することが可能です。
いじめ防止対策推進法によって、学校には、いじめの被害申告を受ければ、学内のいじめ対策委員会で調査を行いその結果を教育委員会(私学の場合は学校法人)に報告する義務があります。このプロセスで、いじめ対策委員会の議事録や、教育委員会への報告文書が作成されるのですが、ここでの議事録や報告文書が、調査報告書としての役割を果たします。
カノンさんのケースのように診断書などがない場合でも、調査報告書において、加害生徒に よるいじめの具体的な内容、聞き取りの際の加害生徒の供述、加害生徒への懲戒処分の内容などについて記載されていれば、証拠としては十分と考えられます。第三者である学校が作成した書面ですので、裁判官に信用してもらいやすいというメリットもあります。
このように、カノンさんのようにSNSの画像しか証拠がなくても、いじめを認定した学校の調査報告書を入手すれば、民事と刑事のいずれであっても、法的措置を講じていくことが十分可能と考えられます。また、カノンさんのケースでは、加害者が認めているとのことですので、裁判となれば、早期に解決するために、被害者に有利な内容での和解に応じるということも考えられるでしょう。