(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で広まった新たな生活様式がどの程度根付くかは不透明ですが、コロナ禍が、人口移動に対して変化をもたらしている可能性もあります。本稿では、ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏が、大・中・小、3つのドーナツからコロナ禍による人口移動の様子を分析します。

3―中ドーナツ:コロナ禍における都心回帰の変化

東京圏における東京23区と周辺部間の人口移動を見ると、コロナ禍前から都心回帰のトレンドが変化し始めていたことが確認できる[図表3]。

 

2011年以降8年連続で、周辺部から東京23区への転入超過数はプラスだったが、2019年には▲0.4万人とマイナスに転じ、リーマンショック後の2009年(▲0.5万人)と2010年(▲0.3万人)と同水準まで落ち込んだ。

 

コロナ禍は都心回帰から郊外化への転換を勢いづけ、転入超過数は、2020年▲2.9万人、2021年▲5.1万人、2022年▲3.0万人となった。2022年はマイナス幅が縮小したものの、周辺部への人口流出が依然として継続している。

 

 

月次データを見ると、2020年4月に緊急事態宣言が発令されて以降、2023年2月までの期間、全ての月で転入超過数がマイナスで推移してきたが、2023年3月は+0.1万人と微増に転じた。

 

それでも、過去の水準と比較して依然として低いため、東京23区と周辺部間の人口移動について、今後も郊外化が継続するのか、それとも都心回帰が復活するのか、その見極めには時間を要することになりそうだ。

 

年齢別に周辺部から東京23区への転入超過数を確認すると、コロナ禍前は基本的に20代のみがプラスで、それ以外の年齢層はマイナスであった。特に10歳未満の転出が目立つことから、就職後の数年間を東京23区で暮らし、結婚して家族が増えると、周辺部へ転居するケースが多いことが推測される。

 

前述の通り、2019年に周辺部から東京23区への転入超過数がマイナスに転じたことを考えると、東京都心部の住宅価格の高騰により、コロナ禍前から子育て世代が郊外に転居する傾向か強まっていた可能性がある。

 

コロナ禍においては、20代の転入超過数はそのプラス幅は縮小したものの、プラスを維持し、20代の都心回帰が続いた。また、2022年は2019年の水準を回復するなど、コロナ禍の影響はほぼ一巡したようだ。それに対して、子育て世代の郊外化は加速した。

 

2020年以降の30~40代と10歳未満の転入超過数はマイナス幅が拡大し、2022年も回復が遅れていることから、在宅勤務の普及が子育て世代の郊外化を後押ししている可能性がある。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月7日に公開したレポートを転載したものです。

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