2.他行から国債を買う場合
2点目として、たとえば銀行Aが銀行Bから国債を買う場合、①(なんらかの理由で)銀行Aが国債購入に見合う準備預金を持っていれば※3、銀行Aは保有資産である「準備預金」を落として「国債」を計上し、銀行Bは逆に保有資産である「国債」を落として「準備預金」を計上します。すなわち、2行間で「国債」と「準備預金」の純粋な付け替えが生じます。
※3 銀行Aが準備預金を持っていたということは、中央銀行が準備預金の発行主体ですから、中央銀行が過去の時点でバランスシートを拡大していたということです。
もしくは、②銀行Aが国債購入に見合う準備預金を持っていなければ、(銀行Aが買い入れる国債を担保に)中央銀行から準備預金を調達して国債を購入します。
このとき、中央銀行は市中銀行に対して与信を行い、準備預金を発行しているため、中央銀行のバランスシートは拡大します。
1度発行した準備預金は減らない
現在は、市中銀行準備預金への付利引き上げによって、主要な中央銀行に「逆ザヤ」の問題が生じています。
ただし、歴史の流れに沿うと、その市中銀行準備預金に対して一部の中央銀行がマイナス金利を付したのが、2010年代後半の出来事でした。
当初、報道などでは「銀行はマイナス金利を避けるべく、国債を買って準備預金を減らすだろう」と言われました。しかし、新発の国債は中央銀行がほとんど買い入れるなか、前節でみたように、ある銀行が他行から既発の国債を買っても、その他行に準備預金が移動するだけです。
中央銀行が1度発行した準備預金は、市中銀行によって消すことはできません。結果として、どこかの銀行がマイナス金利=コストを支払うことになります。
同様に、市中銀行が融資などの見合いで1度発行した預金は、家計や企業によって消すことはできません。預金を使えば、誰かの預金になり、銀行システムで残り続けます。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】