相続人同士の預金トラブルを防ぐ方法
被相続人の意思に従って出金したとしても、他の相続人にうまくその真意が伝わらず、相続トラブルへ発展する可能性があります。未然にトラブルを回避する対策が必要です。
他の相続人と情報を共有する
複数の推定相続人がいれば、被相続人の生存中からその方々に情報を開示しましょう。被相続人の預金から、どんな目的でどの位の金額を引き出したかが客観的にわかれば、相続開始のとき不正に引き出したという疑念は持たれないはずです。
また、証拠を要求されたら速やかに請求書・領収証が提示できるよう、手元に準備しておいた方が無難です。
遺産分割の際は生前に贈与された分も考慮して調整
複数の相続人で遺産を分割する際、相続開始前3年以内の贈与加算の他に「特別授益」を受けた場合も考慮が必要です。特別受益は、被相続人から開業資金や住宅の建築資金を贈与してもらった等、多額の贈与を受けた場合に考慮する利益です。
遺産分割の際に特別受益が考慮される期間(持ち戻し期間)は、相続開始前10年以内となっています。相続開始前3年以内の生前贈与や、相続開始前10年以内に特別受益を受けた相続人は、その事実を正直に他の相続人へ告げて、遺産分割で取得する財産を調整しましょう。
その事実を黙っていたり嘘をついたりすると、後々その事実が判明した場合、相続人同士でトラブルに発展するおそれがあります。
税務署に指摘されない預金引き出しの申告方法
相続税申告の際、税務署から指摘を受けないためには正確な相続財産の把握が必要です。
生前贈与の事実等を相続財産に反映させて申告しないと、税務署から過少申告加算税(誤った相続税額を申告した)、無申告加算税(相続税を申告しなかった)等のペナルティを受ける恐れがあります。
被相続人の預金口座から引き出した目的・金額を記録
被相続人の生存中、本人の医療費支払いや葬儀の出費等に備えるため預金を引き出した人は、引き出した目的・金額を記録しておきましょう。通帳へも記帳し、引き出した金額はどのように使用されたのか、請求書・領収証を添付しておきます。
このような引き出しは相続財産に該当せず、生前贈与にも当たりません。預金を引き出した分は相続財産から差し引けます。
通帳の記録・証拠書類を残していれば、仮に税務署から「相続前に被相続人の財産を着服した」「相続開始前3年以内の贈与ではないのか」と疑われても、被相続人のための出金である事実を証明できます。
相続税申告に不安があるなら専門家へ相談する
被相続人から受けた生前贈与が相続財産の対象となるのかや、相続税申告に関して不安を感じているときは税の専門家である「税理士」に相談してみましょう。
税理士は相続税に関する深い知識・経験があるため的確な助言をしてくれます。もちろん、相続人の代わりに相続税申告を依頼できます。
なお、生前贈与や相続トラブルに関して不安があれば、事前に「相続診断士」へ相談するのも良い方法です。相続診断士は相続全般に深い知識を有するので、適切なアドバイスを行ってくれるはずです。