生前に預金を引き出すと相続に影響するのか?
被相続人が保有していた預金は金融資産として基本的に相続財産の対象になります。ただし、生前に引き出された預金は相続に影響するケースもあれば、影響しないケースもあります。
被相続人から生前贈与を受けた場合
こちらは被相続人が自分のためにではなく、家族へお金をあげるために、預金を自ら引き出した(送金した)場合が該当します。
家族が被相続人から贈与を受けた場合、贈与税の課税の有無が問題となります。この場合、贈与されたら無条件で贈与税を支払う必要はなく、受贈者1人につき1年間で贈与額が110万円以内なら原則として非課税です。
そのため、相続人となり得る方々の相続税負担を減らすため、被相続人が生前から毎年コツコツ生前贈与(暦年贈与)を行っていけば、節税効果が期待できます。
ただし、相続の際に一定の条件へ当てはまると、生前贈与はなかったものとして相続税を計算する必要があります。
被相続人のために許可を得て引き出した場合
被相続人のために本人が保有していた預金を引き出した場合、基本的に相続へ影響はありません。
例えば被相続人が病気・ケガで入院した場合の入院費・治療費、介護施設の入所費用・サービス費用を支払うため、被相続人の預金を使用した場合です。ただし、引き出したお金が余った場合は、再び被相続人の口座に入金した方が無難です。
なぜなら、他の家族に目的・用途を伝えた上で預かっておかないと「被相続人の財産を勝手に自分の物にした」と疑われるおそれがあるためです。
被相続人が死亡して口座が凍結される事態を想定し、引き出したお金を手元へ置いて葬儀費用等に利用したいなら慎重な配慮が求められます。
被相続人に無断で引き出した場合
被相続人の預金を生前に家族の誰かが引き出した場合、次のようなケースでは相続に影響を与える可能性があります。
・引き出した理由に正当性がなかった
・預金を引き出した人が横領(他人から頼まれて預かっているお金を、自分のものにしてしまうこと)を認めた
預金を勝手に使い込んだ場合、お金の返還を求められる事態はもちろん、被相続人本人が「廃除」を家庭裁判所に請求するリスクも想定されます。
廃除とは推定相続人(将来に相続人となるであろうと予想される人)の相続権を剥奪できる制度です。預金を勝手に使い込んだ行為が、家庭裁判所から非常に悪質であると判断された場合、その推定相続人は相続権を剥奪されることになります。