ファイナンス理論で説明できる「日経平均4万円」
ファイナンス理論によれば、成長期待の分だけ、分子のキャッシュフローを割り引く分母の値を低くすることができる。
式(1)で、Pは株価、Eは利益、r は投資家の要求リターン(資本コスト)、g は成長率である。両辺をEで割ると、式(2)を得る。式(2)の左辺はPERである。ここから g が高ければPERは高くなることがわかるだろう。
いま、投資家の要求リターンrを仮に8%だとしよう。「伊藤レポート」が求めた日本企業の目標ROEの水準である。日本企業に成長の期待が持てない場合、分母の割引率は r だけで決まるから8%である。PER=1÷0.08=12.5である。日本株のPERは長いあいだ、12倍~13倍だった。理屈どおりである。
ここにきて、ようやく日本も成長を期待できるようになったとすれば、バリュエーションが切れ上がって当然だろう。r と g とPERの関係をまとめると図表6のようになる。
今年度の我が国の名目GDP成長率は4%近い伸びになるというのがエコノミストのコンセンサス。さすがに長期にわたって4%成長というのはストレッチし過ぎだろう。日本株の期待成長率に4%をそのまま適用できないが、仮に3%成長の期待が織り込まれるとするなら、日本株のPERは20倍までジャスティファイされる。現に、GAFAやテスラなど高いテクノロジーで成長する企業を生み続ける米国株のバリュエーションはPER20倍程度だ。
将来的に3%の成長期待を目指すとして、いまはその途上だから2%成長を仮定しよう。PERは16.7倍でフェアバリュー。
予想EPSがこの先、1割上方修正されて2,400円になると見込めば(そしてその公算は円安だけを考慮してもじゅうぶんにある)、2,400×16.7=4万80円。日経平均4万円が理論的にはじき出される。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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