2023年6月のADPリポート受けた「米・金利急騰」が「ネガティブな作用」とはいえないワケ【ストラテジストが解説】

2023年6月のADPリポート受けた「米・金利急騰」が「ネガティブな作用」とはいえないワケ【ストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2023年7月7日に公開したレポートを転載したものです。

本記事のポイント

・米国の強い経済指標の受け止められ方はネガティブ

・高まる米国景気ソフトランディングシナリオの実現性

・日経平均プット・オプション建玉増加が示すもの

米国の強い経済指標の受け止められ方は「ネガティブ」だが…

昨日(2023年7月6日)発表された6月のADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数は前月比49万7,000人増と、22万人程度の増加を見込んでいた市場予想から大幅に上振れた。

 

これを受けて米国債券市場では金利が急騰。特に政策金利に連動しやすい2年債利回りは一時20bps近く上昇し5.1%台と2007年6月以来16年ぶりの高水準を付けた。株式市場ではダウ平均が500ドルを超える大幅安となる場面があった。いいニュース(雇用増)が悪いニュース(利上げ長期化)と受け止められた。モーニングサテライト(テレビ東京)のNYからの解説では、「嫌な金利上昇」という言葉が使われたが、本当にそうだろうか? と思う。

 

昨日(2023年7月6日)発表された米国の経済指標を総合的に眺めれば、僕にはGood news is good newsだと思える。景気は良好で、一時盛んに喧伝されたリセッションに陥る気配は遠ざかっている。その一方、インフレは着実に鈍化している。米国景気がソフトランディングに向かうベストシナリオ実現の蓋然性が高まっている。その点を確認しよう。

 

高まる米国景気ソフトランディングシナリオの実現性

1.ADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数は前月比49万7,000人増と大幅増加。それでもADPのエコノミストは「年収の伸び率が引き続き鈍化している」とコメントした。

 

2.チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの調査では企業などの6月の人員削減計画は前月から半減。2022年10月以来の低水準となり、リストラも一巡したようだ。

 

3.6月のISM非製造業総合景況指数は53.9と市場予想以上に改善した。前月は50.3と好不況の境目の50割れ目前まで低下していただけに、ここでの切り返しで安堵感が生まれた。一方、仕入価格は2020年3月以来の低水準となり、インフレ面で朗報だった。

 

雇用やサービス業の景況感は良好で、一方インフレは落ち着いている。景気の強さだけに目を向ければ一段の金融引き締めという懸念が浮上するが、肝心のインフレが加速している兆候はない。加えて、利上げがもたらす最悪の事態であるリセッションに陥る兆しが後退している。

 

物事には常に二面性がある。悪いほうばかり強調するのは、多くのメディアおよびメディアで発言する多くの市場関係者の共通点で、非常によろしくない。まあ、そういった連中の話は話半分に聞いておくのが正しい受け止め方である。

 

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