通常の製品(家そのもの)と同様に、太陽光パネルも最終的には廃棄が必要です。
環境省の調査において、日本全体における太陽光パネルの廃棄量は年間5000~7000トン程度、そのうち2/3はリユースされており、リサイクルなど処分されているのは1/3の2000トン弱です。東京都では現状の700トンが、2060年には約4倍の3000トン程度になると予想しています。
一方で、日本全体からの産業廃棄物は3.9億トン、建設業からだけでも8300万トンにおよびます。太陽光パネルの廃棄は現状において建設業からの産廃問題全体からみれば極めて軽微であり、殊更に問題とすべき課題とはいえません。
太陽光パネルを撤去する際は、他の場所で利用する「リユース」が推奨されます。廃棄する場合にもリサイクル技術はNEDOの技術開発などを通してすでに確立しており、各地のリサイクル工場で適切な処理を行うことができます。
近年、将来の本格廃棄を見込み、首都圏においても、様々なリサイクル施設が稼働し、事業用太陽光発電設備の処理が既に行われています。
都は、解体業者、収集運搬業者、リサイクル業者、メーカー、メンテナンス業者等で構成する協議会を令和4年9月に立ち上げ、既存の事業用ルートを活用することで、住宅用太陽光発電設備のリサイクルルートの確立に取り組んでいきます。
太陽光パネルは、ガラスが6割、アルミが2割、樹脂などが2割弱となっており、ほとんどの材は「窓」と同じです。
太陽光パネルに特有の材は、セルは3%、配線やハンダ1%にすぎません。環境省の調査によると、溶出試験よりハンダに使われる鉛が検出されていますが、技術改良により使用量は減少しています。また一部メーカーのパネルから基準値を上回るセレンやカドミウムが検出されていますが市場シェアは小さく、独自のメーカーリサイクル体制が準備されています。現状ではセレン・カドミウムを含まない、単結晶シリコン型が大半です。
パネル解体後、セルや配線の部位は非鉄精錬業者により、各種環境法令の基準値を守りながら、非鉄金属の回収・セメント原料や路盤材として再利用されます。
住宅用太陽光発電設備の撤去にかかる費用は、環境省のH24,H25年における調査では、解体業者では平均8.9万円、施工業者では平均18.9万円です。業者へのヒアリングによるとパネル一枚の処理費(契約・搬送費用別)は、通常の埋め立て処理では約二千円、リサイクル処理では約三千円が目安のようです。
ほぼ全量を海外に依存している化石燃料の膨大な輸入量、それに伴う多大な国富の流出の方が、エネルギー安全保障上はるかに大きな問題です。
2021年の太陽光発電関係の輸入金額は2,500億円に対し、化石燃料の輸入は16.8兆円に達しており、エネルギー価格高騰と円安の影響でさらなる増加が予想されます。部材の一部を輸入するにしても、その後に国内でエネルギーを生み出し続ける太陽光発電は、エネルギー安全保障を強化するのに有効です。
また住宅用は小さな屋根や保障・アフターサービスが充実した日本企業のシェアは、71%(図表5)を占めています。国産のパネルを選択することも可能です。
太陽光パネルに使われるシリコンは多くが中国製であり、人権問題が懸念されるウイグルで製造されているものも含まれると推測されます。アメリカはウイグルの強制労働問題に輸入禁止などで対応しており、日本も含め世界が連携して人権保護を進めていくことが重要です。
一方で、シリコンは身の回りの家電や車などに搭載される、あらゆる半導体に使われている現代社会の必需物質です。太陽光パネルに固有の問題ではなく、シリコンやレアメタル全般に共通の問題として、適切に対処していく必要があります。
正しい知識・情報を入手して、最適な選択を
太陽光発電の導入について、様々な角度から説明してきました。
住宅を新築する際には、高い躯体性能を確保することが最優先ではありますが、その上で、地球温暖化対策が世界的規模で進む中、日照条件等が合致するのであれば、太陽光発電の導入は進めるべきだと考えます。
筆者は、消費者の方々に地球環境のために搭載すべきと主張するつもりはありません。消費者の方々は、経済合理性に基づく判断でよいと思います。ですが、その観点だけで考えても、投資としてとてもおいしいものであることは、以前、説明した通りです。
太陽光発電については、意見が賛否にわかれており、不確かな情報も多いため、迷われる方も多いかと思います。
いままでご説明してきた資料で疑問点などについて確認した上で、太陽光発電を導入するか否か、ご自分やご家族にとって、最適な選択をしていただければと思います。
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