(※写真はイメージです/PIXTA)

自分の親が認知症になったら、財産の管理や相続がどうなるのか不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。その不安を解消する方法として、成年後見制度の利用があります。本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマそう−相続登記−』から一部編集してお届け。本稿では、司法書士法人みどり法務事務所・代表司法書士である寺島能史氏監修の記事より、成年後見制度とは何か、成年後見制度を利用するメリット・デメリット、家族信託との違いについて解説します。

成年後見制度とは?

まず、成年後見制度とはどんな制度なのかについてご説明します。

 

成年後見制度の概要

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などの影響で、十分な判断能力がない人の財産管理や身上保護を「後見人」と呼ばれる人が行う制度です。後見人は、家庭裁判所で選任されます。

 

成年後見制度が作られた背景

成年後見制度は、2000年の民法改正により始まった制度です。それまでは禁治産制度と準禁治産制度がありましたが、これらの制度より本人の能力や考えに合わせたサポートができるようになりました。

成年後見制度の種類

成年後見制度は大きく分けて2種類あります。ここでは、法定後見制度と任意後見制度についてご説明します。

 

法定後見制度

法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になったときに本人や親族が家庭裁判所に申し立てて後見人を選定する制度です。本人の判断能力に合わせて、後見・保佐・補助の制度が用意されています。

 

例えば、認知症の方が施設に入居するなどして本人の自宅が空き家になる場合、後見人が家庭裁判所に申し立てることにより、家の売却が可能になります。なお、申し立てをするときに後見人の候補は出せますが、実際の後見人を選定するのは家庭裁判所です。

 

また、財産が多い場合は親族による使い込みが心配されるため、親族ではなく弁護士や司法書士が後見人に選定されるケースが多いです。

 

任意後見制度

任意後見制度は、認知能力が十分にあるうちに自分の財産管理や身の回りのケアをしてもらうために後見人を選んでおく制度です。法定後見制度は家庭裁判所が後見人を選任するのに対し、任意後見制度は本人が後見人を選べるのが大きな特徴といえます。本人が認知症を発症したのちに家庭裁判所に申し立てることで効力が発生します。

 

ただし、すでに認知症を発症している人はこの制度は使えません。

成年後見制度を利用するメリット

ここでは、成年後見制度を利用するメリットについてご説明します。

 

信頼できる後見人を選べる

任意後見制度を利用する場合、信頼できる後見人を自分で選べるのがメリットです。ただし、法定後見制度では家庭裁判所が後見人を選びます。

 

本人が不利な条件で契約しても取り消せる

後見制度を利用すると、内容を理解せずに契約を結んでしまったり、悪徳商法に騙されてしまった場合でも、後見人が契約を取り消すことができます。

 

身近な人等による財産の使い込みを防止できる

法定後見制度は、後見人に親族が選ばれるケースは少なく、弁護士や司法書士が後見人になるケースが多いです。そのため、身近な親族による財産の使い込みを防止できる効果があります。

 

介護などのサービスや施設への入所に関する契約等の代理契約が可能

後見制度では身上保護が求められています。本人が介護施設や病院へ入所する際は、後見人による代理契約が可能です。

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