(※写真はイメージです/PIXTA)

電気料金には大手電力会社の「規制料金」と新電力会社の「自由料金」があります。「自由料金」の方が割安なイメージがありますが、かえって割高になる場合もあります。そこで、電気料金がどのように決まっているのかを理解しておくことが有益です。東北大学特任教授の竹内純子氏、FPの風呂内亜矢氏、スマートテック社が監修した『どうする!? 電気代 節約完全マニュアル』(ART NEXT)より一部抜粋してお伝えします。

「託送料金」とは

「法令等により算定される費目」のうち「託送料金」は、電気を送る際に小売り電気事業者が利用する送配電網の利用料金として、一般送配電事業者が設定するものであり、経済産業大臣の認可が必要です。

 

新規参入する小売り電気事業者だけではなく、既存の大手電力会社の小売部門が送配電網を利用する際にも、各社が販売した電気の量に応じて託送料金を負担することになっています。

 

託送料金には送配電部門における人件費、設備修繕費、減価償却費、固定資産税のほか、「電源開発促進税」、「賠償負担金」、「廃炉円滑化負担金」などが含まれます。それぞれ以下の通りです。

 

◆電源開発促進税

発電施設等の設置の促進および運転の円滑化を図る等のための財政上の措置、ならびにこれらの発電施設の利用の促進および安全の確保ならびにこれらの発電施設による電気の供給の円滑化を図る等のための措置に要する費用に充てるための税で、納税者である一般送配電事業者が、電気料金(託送料金)の一部として需要家から徴収するものです([図表4]参照)。

 

[図表4]電源開発促進税の計算式

 

◆賠償負担金

「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(2016 年12月閣議決定)に基づき、福島第一原子力発電所の事故以前から原子力損害の賠償のために備えておくべきであった総額約2.4兆円を40年程度で回収するため、電気料金(託送料金)の一部として需要家から受け取るものです([図表5]参照)。

 

[図表5]賠償負担金の計算式

 

◆廃炉円滑化負担金

「エネルギー基本計画」(2018 年7 月閣議決定)で示されている原発依存度の低減というエネルギー政策の基本方針の下、円滑な廃炉を促すために原子力発電所の廃炉に伴って一括して生じる費用を分割計上する費用として、電気料金(託送料金)の一部として需要家から受け取る([図表6]参照)。

 

[図表6]廃炉円滑化負担金

 

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

「法令等により算定される費目」には上述の「託送料金」以外にも「再生可能エネルギー発電促進賦課金」も含まれます。

 

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用を需要家から賦課金という形で徴収します([図表7]参照)。

 

[図表7]再生可能エネルギー発電促進賦課金の計算式

 

「自由料金」(新電力)を検討するときの注意点

このように、自由料金においては、「事業者の裁量で算定される費目」と、「法令等により算定される費目」の2種類の費目の合計が、電気料金に占める費用の総額となります。総括原価方式と異なり、事業者の経営努力等により、従来よりも安価に電力を供給することができるしくみになっているということです。

 

ただし、「事業者の裁量で算定される費目」のうち「電力調達のための費用」は、昨今のような燃料価格の高騰の下では、かえって割高になってしまう可能性があります。

 

現在は燃料費高騰の影響を大手以上に受けている新電力も多く、「新電力に切り替えればほぼ電気代が安くなる」という状況ではありません。

 

新電力を検討する場合は、「電力調達のための費用」の算定方法がどうなっているかを確認し、かつ、自身の電力の使用スタイルに合った契約プランを見つけることが重要です。

 

 

竹内 純子

NPO法人 国際環境経済研究所 理事

 

風呂内 亜矢

日本FP協会評議員・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

スマートテック

 

どうする!? 電気代 節約完全マニュアル

どうする!? 電気代 節約完全マニュアル

竹内 純子・風呂内 亜矢・スマートテック

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