(2)本件の結論:免責不許可事由に該当し得る事情は見当たらない
本件では、免責不許可事由に該当し得る事情は見当たりません。免責不許可事由は、法律に規定されていますが、このどれにも該当していないと考えられるためです。
(3)法律上、原則、免責されないケースとは
では、法律に規定されている免責不許可事由には、どのようなものがあるでしょうか。
破産法には、いわゆるクレジットカードの現金化、浪費などが免責不許可事由として規定されています。
今回のケースでは、これらの免責不許可事由に当たり得る事情は見当たりません。まず、今回のケースの法律上の整理をします。
今回のケースでは、ご主人が元妻名義の借金(と同額)の金銭を元妻に支払い、これを元手として元妻が債権者に支払う流れが想定されています。
そのため、元妻の債権者への支払とは独立して、元妻がご主人に対し、元妻名義の金銭と同じ金額の金銭の支払いを求める債権を持っているということとなります。ですので、破産の手続きを進めるうえで、ほかの借金と扱いは変わらず、これまで支払ってきた事情は、ほかの借金の支払と同様に免責不許可事由には該当しません。
(4)原則免責されないケースでも免責されるケースとは
では、仮に、免責不許可事由に該当する事情がある場合、一律に免責されないのでしょうか。
この場合でも、裁判所の裁量で免責される場合があります。破産手続開始の決定に至った経緯などを考慮して、免責してよいかどうかが判断されます。
2.ご夫婦ともに破産の手続きを取るべきか、ご主人だけにしておくべきかの判断基準
(1)まず、ご主人が破産した場合の影響は、法律上は、ご主人についてだけ考えることになります。
そのため、ご主人が破産したからといって、ご相談者様が破産をしなければならないわけではありません。
なお、ご主人名義の自動車があり、債権者が担保を持っており引き上げをする場合などには、ご家族の生活に影響が出る場合があります。
(2)次に、ご相談者様が債務整理などを行うかどうかの判断は、収入と債務総額次第です。
債務整理や破産の選択肢を検討するにあたって、一般には、収入と債務総額から検討する返済計画の見通しが立つかどうかが判断基準となります。
今回のケースでは、例えば、ご主人について破産をすることで、これまで返済に充てていたご相談者様の借入がなくなり、家計の収支上、返済計画の見通しが立つのでしたら、そのまま返済したり、任意整理を行い毎月の返済額の交渉をすることが考えられます。
任意整理をしても返済計画の見通しが立たないという場合には、破産も選択肢に入ってくるでしょう。
(3)ご相談者様も破産をする場合のデメリットなど注意事項
ご相談者様名義での教育ローンなどがありますので、ご相談者様が破産を選択する場合には、大学の学費の支払などに悪影響がないかどうかの検討が必要になります。また、自由財産を超える範囲の財産を手放す必要があるため、手放したくない財産がある場合には、破産以外の方法を検討していくことになります。
そのほか、新しい借入や分割での支払ができなくなるなど経済的な信用を前提とした行動ができないという日常生活への影響があります。
このようなことを考慮したうえで、ご相談者様も破産をするかどうか検討していくこととなります。
最後に
借金の問題は、今回のケースのように、借金のために借金をして目の前の支払に対応し続けていることも多く、なかなかご自身の債務状況も理解できていないケースが多いです。目の前の支払に対応し続けているあまり、将来的な支払方法などまで頭が回らなくなってしまい、困り果ててしまわれることも少なくありません。
現状を整理し、対応するべき方法を検討するため、借金の問題でお困りの方は、お近くの弁護士にご相談されることをおすすめします。