全研本社が実施した日本の中小企業の経営者を対象としたアンケート調査によると、IT(情報通信)人材に任せたい業務は「セキュリティ管理」との回答が4割弱と最多だった。「社内パソコンサポート」や「エクセルによる表計算」など比較的、初歩的なスキルへのニーズが大きいことも明らかになった。
企業のIT関連のニーズは多いが、経済産業省によると2030年に国内のIT人材は最大で79万人不足する見通し。人材不足への対策について中小企業経営者に聞いたところ、最も多かったのは「リスキリング(学び直し)」だった。新たな人材の獲得が容易ではない中、採用に加えて中小企業が既存の社員の能力を磨いて対応しようとしていることも浮き彫りになった。
パソコンサポートなど基本的な能力のニーズは意外に多い
調査は全研本社が中小企業の経営者を対象に2月24~26日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の業種は建設業、製造、卸売・小売、不動産、サービス、情報通信、金融・保険、宿泊など。
「IT人材にどんな業務を任せたいか」との質問に対しては「セキュリティ管理」との回答が最も多く、37%に達した(複数回答)。情報システムの停止による損失や顧客情報の漏洩(ろうえい)による企業や組織のブランドイメージの失墜など、情報セキュリティ上のリスクが高まっていることが背景にあるとみられる。
次に多かったのは「社内パソコンサポート」と「エクセルによる表計算やマクロ(簡易プログラム)の生成」との回答で、それぞれ31.5%だった。現在は世代間などで社内のITスキルの格差が大きいことから、高度技術だけではなく、基本的な能力を持つ人材を喫緊で必要とする企業も多いようだ。
このほか、「システム開発・保守」が28.5%、WEB制作が26.5%だった。「サーバー構築」や「データ分析」と答えた人もそれぞれ20.5%を占めた。一方で注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)導入は16.5%、AI(人工知能)・機械学習との回答は11%にとどまった。
IT人材不足には「リスキリング」や「中途採用」で対応
もっとも、少子化による人口減少もあって中小企業はIT人材の獲得に四苦八苦している。同調査では、「IT人材が社内にいない」と回答した経営者は70%にのぼった。「IT人材の不足にどう対応しているか」との質問に対しては「リスキリング」の回答が31%に達し、最多だった(複数回答)。増加するIT関連業務への対応に向けて、企業主導で社員のスキルの習得や向上を目指している姿が浮き彫りとなっている。
次に多かった(その他以外)のは「中途採用」で25.5%に達した。「人材紹介」が22.5%、社員が紹介する「リファラル採用」も9.5%だった。「新卒採用」は11%にとどまっており、すでに企業で経験がある即戦力を企業が欲しがっていることがわかる。
少子化による生産年齢人口の減少に伴い、注目されているのが外国人の雇用だ。しかし、「IT人材の不足にどう対応しているか」との質問に対しては、「外国人人材を中途で採用する」が4%、「新卒の外国人人材を採用する」は2%にとどまった。
IT人材の喫緊の不足については即戦力が必要であるため、外国人人材の採用を検討する企業は多くないようだ。一方で中期的なIT人材の獲得戦略については外国人の採用は不可欠だとみられ、採用に積極的な企業は少なくない。
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