「高年収のサラリーマンの税金対策」として勧められる「不動産投資」は本当に有効か?「2つの税制メリット」と「見落としてはならない2つの注意点」【税理士が解説】

「高年収のサラリーマンの税金対策」として勧められる「不動産投資」は本当に有効か?「2つの税制メリット」と「見落としてはならない2つの注意点」【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

日本のサラリーマンは、「超過累進課税」の下、年収が上がっても手取りは大して増えません。また、納税は源泉徴収と年末調整がメインで、「節税」の手段も限られています。そこで、よく「高年収のサラリーマンの税金対策」として勧められる方法の一つに「不動産投資」があります。しかし、果たして本当に有効でしょうか。不動産投資の税制メリットと注意点について、税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が解説します。

「税制メリット」を目的として不動産投資を行う場合の2つの注意点

このように、不動産投資の主要な税制メリットは、多額の「減価償却費」を計上して不動産所得のマイナスを出し、それを他の所得と「損益通算」することにより、当座の税金を抑えられるということにあります。

 

しかし、警戒しなければならない注意点もあります。以下の2点です。

 

【不動産投資における注意点】

1. 投下資本の回収に失敗するリスクがある

2. 建物の償却が終わったあとの「出口」を考えておかなければならない

 

◆投下資本の回収に失敗するリスクがある

不動産投資はあくまでも「投資」です。すなわち、上述したように、賃料収入と、最終的に売却する際の売却代金により、投下資本を回収できなければ、結果的に損をしてしまいます。

 

そして、多くの場合、賃料収入が得られる収益性の高い物件は売却する際に高値がつき、収益性が低いと売却代金も低くなります。

 

したがって、物件選びは、物件の状態、周辺の住環境、利便性といった事情を吟味し、同じエリアにある類似の物件の情報も可能な限り集めるなどして、慎重に行う必要があります。

 

◆建物の償却が終わったあとの「出口」を考えておかなければならない

建物の償却が終わったあとは、当然のことながら、税金を抑える効果が大幅に減少します。収益性の高い物件であればあるほど、かえって税金が大きくなります。

 

したがって、多くの場合、償却を終えて目的を達した後、物件を売却することになります。その場合、売却益が大きければ、税金がかかることになります。

 

その際の税金をなるべく低く抑えるには、売却のタイミングを購入から5年後以降にすることが考えられます。なぜなら、5年後以降のほうが、税負担が少なくなるからです。

 

すなわち、不動産の売却益は「譲渡所得」として「分離課税」の扱いを受けますが、購入から5年以内だと「短期譲渡所得」と扱われ税率39.63%なのに対し、5年後以降は「長期譲渡所得」として税率20.315%と、大幅に税負担が少なくなるのです(国税庁HP参照)。

 

このように、不動産投資を行うと「減価償却費の計上」と「損益通算」という2つの税制メリットを得られることが強調されます。しかし、あくまでも「投資」である以上、投下資本を回収できるかという視点を見落とすことはできません。また、最終的に売却する際の出口をどうするかということも考えておく必要があります。

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

 

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