「何もかも私任せ…もう限界」
「勝手に冷蔵庫をあさって食べ物を探し、洗濯物は『洗っておいてくれる?』と当然のように渡してくる。ここをどこだと思っているのか、と…」
そう語るのは、北海道に住む会社員の佐藤美香さん(仮名・35歳)。東京勤務だった夫の転勤が決まり、2人で新天地・札幌へ引っ越したのは、わずか1ヵ月前のことでした。
共働きながら、慣れない土地での新生活に奔走する美香さん。ようやく落ち着きかけたころ、夫がこう切り出しました。
「しばらく親が遊びに来るから、泊めてもいいよな?」
軽く聞こえたその一言。しかし結果的に、義父母は10日以上滞在。毎日朝から晩まで家におり、観光に出かけるわけでもなく、家事も料理もすべて美香さん任せだったといいます。
美香さんの不満は日増しに積み重なっていきました。義母は朝食を終えるとすぐテレビをつけ、義父は昼間からビールを飲みながら新聞を広げる。食器を片付けても「ありがとう」の一言もなく、洗濯や掃除にも手を出さない。
「最初は“お客様”としてもてなそうと思っていたんです。でも、何日経っても生活に協力する気配はなくて…。まるで、私の家が“実家の別荘”みたいに扱われている感じでした」
夫に相談しても、「まあまあ、そんなに気にするなよ」とのんきな反応。限界に達したある夜、美香さんはとうとう爆発しました。
「ここはホテルじゃない! 冷蔵庫を勝手に開けて、好きなものだけ食べて…。私はあなたたちの家政婦じゃありません!」
突然の怒号に、義母は驚いた様子で言葉を失い、夫も沈黙。気まずい空気が流れたまま、その日の夜に義両親はホテルを取り、翌朝、予定より早く帰っていきました。
転勤・引っ越し・育児のサポートが必要なタイミングなどで親を一時的に招くケースは珍しくないでしょう。しかし、“ちょっとした滞在”がトラブルの火種になることも少なくありません。
また、内閣府の『令和7年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の世帯のうち63.7%が「単独世帯」または「夫婦のみの世帯」で構成されており、いわゆる“老々世帯”の増加が顕著です。核家族化が進むなか、世代間の関わり方や距離感のとり方が、あらためて問われる時代となっています。
