不動産投資の2つの税制メリット
不動産投資は、物件を購入し、それを人に賃貸して賃料収入を得ます。そして、最終的に売却します。この一連の流れのなかで、賃料と売却代金によって投下資本を回収することになります。
不動産投資を行うことにより受けられる税制メリットとされているのは、主に以下の2つです。
【不動産投資における2つの税制メリット】
1. 不動産投資で短期に大きな「損失」を計上できる(減価償却)
2. 不動産投資で生じた「マイナス」を他の所得から差し引ける(損益通算)
ただし、後述するように、税制メリットだけでなく「投下資本の回収」まで十分に考えて行う必要があります。
◆税制メリット1|不動産投資で短期に大きな「損失」を計上できる「減価償却」
賃料収入は所得税・住民税の計算上「不動産所得」と扱われ、以下の計算式により算出されます。
【不動産所得の計算式】
収入金額-必要経費
必要経費を大きく計上できれば、その分、税負担が抑えられることになります。
この「必要経費」で最も重要なのが、「減価償却費」です。減価償却とは、資産の購入代金額を、複数の年度に分けて必要経費に算入していくことをいいます。
資産の使用価値が時の経過とともに経年劣化し「減価」する分を、「償却」していくということです。
不動産は「土地」と「建物」に分けられますが、建物のみが「減価償却」の対象となります。建物は経年劣化しますが、土地は経年劣化しないからです。
減価償却で重要なことは、償却期間が短いほど、1年度あたりの減価償却費が大きくなるということです。
減価償却の期間は資産の種類ごとに「法定耐用年数」として定められており(国税庁HP「主な減価償却資産の法定耐用年数表」参照)、建物については以下の通りです。
【建物(新築)の法定耐用年数】
・木造:22年
・軽量鉄骨造:27年超
・重量鉄骨造:34年超
・RC造・SRC造:47年
ただし、中古建物の場合、以下のように、短くなります。
【法定耐用年数 > 築年数の場合】
「法定耐用年数-築年数×0.8」
【法定耐用年数 ≦ 築年数の場合】
・木造(築22年超)⇒4年
・軽量鉄骨造(築27年超)⇒5年
・重量鉄骨造(築34年超)⇒6年
・RC造・SRC造(築47年超)⇒9年
以上からすれば、もっとも減価償却費を短期で大きく計上できるのは、「築22年超の木造建物」ということになります。
たとえば、「木造・築23年・3,000万円」の建物であれば、減価償却費を4年にわたり「1年あたり750万円ずつ」計上できるということです。
減価償却費を含めた「必要経費」が賃料収入を上回れば、その額が「損失」つまりマイナスとして計上されます。
◆税制メリット2|不動産所得のマイナスを他の所得から差し引く「損益通算」
不動産所得の計算上、マイナスが発生した場合、他の所得から差し引くことができます。「損益通算」といいます。
10種類ある所得類型のうち、損益通算が認められるのは限られており、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得(一部のみ)」です。
これらのうち、サラリーマンにとって現実的に利用可能なのは「不動産所得」と「事業所得」です。つまり、不動産投資(不動産所得)か、それ以外の副業(事業所得)で損失を出すということです。
しかし、このうち、不動産投資以外の副業については、小規模だと「事業所得」と認められず「雑所得」扱いになってしまうケースがあります。「雑所得」だと損益通算を受けられません。
これに対し、「不動産所得」の場合、規模は特に問題とされないので、確実に損益通算を受けられることになります。
サラリーマンが税金を抑える有力な方法として「不動産投資」が挙げられる理由は、ここにあります。
◆補足|「5棟10室基準」をみたせばさらに「65万円の控除」も
不動産投資を行う場合、一定の規模に達すれば「青色申告」をすることにより65万円の「青色申告特別控除」を受けることができます。
条件は以下の通りであり、よく「5棟10室基準」といわれるものです。
【青色申告ができる条件】
・1戸建て:5棟以上
・アパート等:独立の居室が10室以上