やっぱり次男に会社を継がせたい…元・社長候補の長男へすでに「自社株5%」を渡している場合の「揉めない生前対策」【弁護士が解説】

やっぱり次男に会社を継がせたい…元・社長候補の長男へすでに「自社株5%」を渡している場合の「揉めない生前対策」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんは自身の経営する株式会社の承継について悩んでいました。もともと長男に継いでもらおうと株式の一部贈与までしていたのですが、最近になって優秀な次男Dに継いで欲しいと考えが変わったためです。このような場合、さまざまなトラブルが予想されますが、生前どのような対策がとれるでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、解説します。

会社を経営しており、事業を子どもに承継させたい

【相談の概要】

被相続人A(70歳)には結婚してから40年になる妻B(68歳)、子C(35歳)、子D(30歳)がいます。

 

Aは株式会社甲社を40年経営しており、経営は堅調で、税理士からは株価が取得時よりも相当に上昇しているといわれています。

 

甲社の株式については、Aが85%、妻Bが10%、子Cが5%を保有しています。甲社の株式以外では、Aは自宅不動産(土地5,000万円、建物3,000万円)と預貯金1億円、その他有価証券2,000万円を保有しています。

 

Aとしては、当初、甲社をCに承継させるつもりであり、そのためにAはCに株式を一部贈与までしていましたが、経営者としてはDの方が優秀であると判断するに至ったため、Dに事業を承継させたいと考えています。なお、BはAの考えを尊重し、すでに財産も十分あるので、Aの遺産について承継する意欲がないが、自宅には住み続けたいと考えています。

 

【相談を受けた弁護士の回答】

・事業承継を行う意思があるのであれば早めに対策を行うことが必要です。

・まず、事業承継を行う前提として会社の状況を十分ヒアリングし、後継者の決定とともに、会社の磨き上げをします。

・税理士などの他士業との連携が必要です。

・その上で長男Cから株式を買い取るか、買い取りを拒否した場合にはスクイーズアウトを実施します。

・A保有株式については、生前贈与(死因贈与)、遺言又は売買などによりDに承継させるが、売買又は生前贈与をする場合には、株価対策を十分検討します。

・株式をDに承継する場合には、Dの遺留分に配慮するために、いわゆる円滑化法の適用を検討します。

・不動産は遺言でCに承継させつつ、Bに配偶者居住権を利用できるようにします。

1.事業承継の意義

創業者としては事業を立ち上げ、売上げを上げて事業を継続させることに力を注ぐべきことはいうまでもありません。もっとも、事業を長年継続してきた場合には次の世代にどのようにして事業を継がせるか、すなわち事業承継が問題となります。特に我が国においては、後継者不足に悩まされており、株式会社東京商工リサーチによれば、2019年も経営者の高齢化や後継者不足を背景に4万件台の水準で企業の休廃業、解散がなされています。

 

事業承継には時間がかかる…早めの準備の重要性

立上げから何十年も継続してきた事業が休廃業することは、創業者の想いに沿わないことが多く、また、日本経済としても損失は大きいといえます。そのため、世代を超えて事業を継続していくための事業承継を適切に行うことが重要となりますが、後述するような事業承継の対策は一気に行えるものではなく、少しずつ時間をかけて行っていくのが望ましいため、早めに対策の検討を行うことが必要です。

 

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次ページ2.ヒアリングの意義と会社の磨き上げ

※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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