死亡した夫の預金2,000万円と夫が知人と共同購入したマンションの持ち分…「内縁の妻」が取得する方法【弁護士が解説】

死亡した夫の預金2,000万円と夫が知人と共同購入したマンションの持ち分…「内縁の妻」が取得する方法【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

1985年5月に男女雇用機会均等法が成立するなど、1980年代以降、女性の社会進出にともない結婚観も大きく変化しました。そのようななか、さまざまな理由で「非婚」を選んだ人にとって悩みのタネとなるのが「相続問題」です。そこで本記事では、実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、内縁関係の男女の相続について解説します。

「共同購入のマンション」の持分は取得できるのか?

【相談の概要】
長年夫婦同然に暮らしていた内縁関係のA、Bは、男性Aが亡くなり、女性BとAとの間に子どもはなく、Aの両親はすでに他界し、兄弟姉妹もなく、Aに相続人は一人もいません。Aの遺産は、預金2,000万円及び第三者に賃貸している区分所有マンション一室の持分であり、AがBとともに住んでいたのは賃貸アパートです。

 

BはAの財産を取得することができますか。上記区分所有マンション一室は、Aが知人Cと共同で購入したもので、AとCの共有持分は二分の一ずつです。Aの持分はBが取得できるのか、Cが民法255条により取得することになるのでしょうか。

 

民法等の一部を改正する法律(令和3年4月28日法律第24号)が、書籍発刊時は施行されていませんでしたが、令和5年4月1日に施行されたため、改正点を変更しています。


【相談を受けた弁護士の回答】
BはAの相続財産については、特別縁故者として利害関係を有する者であるため、相続財産清算人が選任されていない場合には、選任の申立てを行うことを検討します(民法952条)。

 

そして、相続財産清算人選任及び相続人捜索の公告期間(改正民法952条第2項により6か月を下らない期間)満了後3か月以内に、財産分与の申立てを行い(改正民法958条の2第2項)、後日、家庭裁判所の審判により、預金、区分所有マンションの持分の帰属が決定されます。なお、借地借家法36条により、賃貸アパートの居住権はBが承継します。

1.内縁の妻への財産分与

相続財産清算人の選任及び特別縁故者への相続財産分与の制度

民法951条は、「相続人のあることが明らかでない」場合、「相続財産は法人とする」と定めて相続財産に法人格を与え、権利義務の帰属主体としています。そして、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の申立てによって相続財産清算人を選任し(民法952条)、相続財産の管理及び清算等を行いますが(相続財産清算人の制度)、相続人の捜索公告期間が満了すると、相続人の不存在が確定します(民法958条)。

 

そして、相続人の不存在が確定した場合、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者に対して、家庭裁判所が相当と認める範囲で、相続財産の全部又は一部を与える制度が、昭和37年の民法の一部改正(昭和37年法律第40号)により、新設されました(特別縁故者制度、民法958条の2)。

 

これは、当時、遺言書を作成する習慣がなかった社会の中で、相続人がいない場合に、相続財産を国庫に帰属させるよりも、特別縁故者に帰属させる方が、被相続人の意思に合致し、ひいては国民感情にもかなうという趣旨から設けられたものです。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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