(※写真はイメージです/PIXTA)

「お金」は時に、人間の本性をむき出しにさせ、家族の仲を引き裂いてしまうことがあります。Cさんの兄は、亡くなった母の遺産の詳細を教えてくれないばかりか、母の預金通帳を持ち逃げしました。Cさんが兄と遺産をわけるためには、まずは遺産の詳細を調べる必要があります。兄の協力をあおげない場合に、遺産の詳細はどのように調べるのでしょうか。本記事では、実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、相続人の1人が協力しない場合の遺産の調査方法について解説します。

相続人の1人が協力しない場合の遺産の調べ方

【相談の概要】
被相続人Aは、遺言を作成せず亡くなりました。Aの夫は既に死亡しており、Aの法定相続人は、Aの近くに住んでいる長男B(50歳)と、県外に暮らしている長女C(42歳)の二人です。

 

Aの生前の財産管理は主にBが手伝っていたので、CはAの遺産について、自宅の土地建物以外にどのようなものがあるのか、詳細を把握していません。Cは、Bに対して、Aの相続財産について遺産分割の話合いを持ち掛けていますが、BはAの遺産を独り占めしようとしているのか、Aの預金通帳などの書類を持って行ってしまい、Cに内容を教えてくれません。このような場合に、CはどのようにAの遺産を調査すればよいでしょうか。

 

【相談を受けた弁護士の回答】

基本的には、法定相続人であれば単独で調査できるので、Bの協力がなくともC単独で調査可能です。Aの自宅内に残されている書類や郵便物、パソコンや携帯電話の履歴等から、所有する不動産、取引があったと思われる金融機関、証券会社、保険会社等を特定し、その会社に個別に照会をかけていくことになります。

1.遺産の調査

被相続人が遺言を残している場合や、相続人が被相続人の生前の財産管理を手伝っていたような場合には、遺産の内容を概ね把握していることが多いですが、そうでない場合には、どのような遺産があるのか把握していないということもあるでしょう。

 

このような場合、遺産分割協議を行う前提として、まずはどのような遺産があり、またそれがどのような状態にあるのかを調査し、把握することが必要です。

2.遺産を見つける手掛り

被相続人Aの自宅に出入りできる場合には、まず不動産の権利証や固定資産税の通知書、預貯金通帳、保険証券など、財産の内容が直接分かる書類等を探すことが最も簡便です。

 

特に、預貯金通帳については、その預貯金の存在が判明するだけにとどまらず、その取引の履歴から他の財産が判明することもあるので、取引内容まで確認することが重要です。例えば、固定資産税の引き落としがあれば不動産の存在が推測されますし、保険料の支払があれば生命保険に加入していたことが分かるので、調査の重要な端緒となります。

 

また、直接的に遺産を確認できる書類でないとしても、自宅に届いているダイレクトメールや、パソコンや携帯電話のアプリやブックマーク、メールの履歴などから取引があった金融機関や証券会社、保険会社等が判明することも多いので、これらの確認も行うとよいでしょう。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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