やっぱり次男に会社を継がせたい…元・社長候補の長男へすでに「自社株5%」を渡している場合の「揉めない生前対策」【弁護士が解説】

やっぱり次男に会社を継がせたい…元・社長候補の長男へすでに「自社株5%」を渡している場合の「揉めない生前対策」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんは自身の経営する株式会社の承継について悩んでいました。もともと長男に継いでもらおうと株式の一部贈与までしていたのですが、最近になって優秀な次男Dに継いで欲しいと考えが変わったためです。このような場合、さまざまなトラブルが予想されますが、生前どのような対策がとれるでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、解説します。

2.ヒアリングの意義と会社の磨き上げ

まず、事業承継を支援する際、会社の基本的な情報を入手した上で、会社の状況、経営者の希望、経営者の親族の構成と状況等についてヒアリングを行うことにより、事業承継の大きな方向性を決めることとなります。

 

また、経営者としては事業承継が必要だとしても、特に創業者である場合には、会社を自分が作ってきたという自負が強いために、第三者に会社のことをとやかくいわれるのを良しとしないところがあります。事業承継が遅れ気味になるのはこのような点も影響していると思われます。

 

この事業承継手続開始の壁を乗り越えるには、事業承継の担い手たる弁護士との信頼関係を築くことがその第一歩となります。そのためには何度も経営者とお会いしてその思いをしっかりと聞きながら、経営者がこの弁護士であれば信頼して事業承継のサポートを依頼できる、と理解いただくことが重要です。

 

そのため、このヒアリングの時間、機会は大変大事です。また、経営者は売上向上、経費削減には強い意識がありますが、法務面においては十分理解していない場合も多いため、承継させる事業が法的に問題ないようにするために、会社法の改正に伴う定款の変更の要否、登記情報の変更の要否、就業規則の見直し、規約類の整備等、会社の磨き上げを行うことが必要となります。

3.税理士など他士業との連携

事業承継のうちの親族内承継においては、経営者が保有する株式など個人資産をどう承継させるのかを検討することが必要であるため、相続税(生前贈与の場合には贈与税)の試算が不可欠であり、その際には税理士の協力が必要となります。

 

事業承継の支援を行う際には、当該企業の顧問税理士など税理士と連絡を取り合って、税務面からの検討を踏まえて事業承継プランを作成することが必要となります。

 

また、承継すべき資産の中に不動産がある場合、その不動産の時価の算定が必要な場合があります。その際には不動産鑑定士の協力が必要になります。また、実際に不動産にかかる所有権移転登記手続を行う際には司法書士に依頼をすることが有用です。このように、事業承継を進めるには、他士業との連携が必要となります。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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ぎょうせい

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