過去の事例で、他の相続人が提出した相続税の申告書について、裁判所に文書提出命令を申立てたところ、この申立ては認められませんでした。
相続人はそれぞれが相続税の納税義務を負っておりますので、各自が独自に調査をして申告、納税を行う必要があります。
一般的には、相続税に関して配偶者控除の適用を受けるためには、遺産分割が完了している必要がありますが、未分割のままで申告をすることはできます。この場合、配偶者控除の適用を受けることができず、一旦納税する必要が生じる場合もあります。適切な手続きをしておけば、一定の期間内であれば、余分に支払った税金の還付を受けることも可能です。
期限が過ぎてしまっても、期限後に申告をすることで、配偶者控除を受けることはできます。この場合は、延滞税や無申告加算税などが発生する場合があります。
個別具体的な事案についての税務申告の方法や税額等の計算については、税理士に相談する必要があります。
2,000万円を取り戻すことはできるか
本件のように、2,000万円を義姉が返すと言っていたとしても、それを口頭で一度聞いた限りで、何らかの合意書などが作成されていない状況では、実際に裁判をしても、簡単に取り戻すことはできない可能性が高いと思われます。
裁判になると、請求を受けた相手方は、実際には言っていないなどと主張をしたり、言ったとしても返す必要があるのであれば払うと言っただけと主張するなど、様々な言い逃れをしてきます。
結局のところ、本件で義姉から2,000万円を取り戻すことができるかは、法的に請求が可能なのかという問題になります。
この2,000万円について、義姉から無心された夫や相談者が借用書なども作らず単に渡してしまっており、義姉から一度も返済がないような場合、単なる贈与と認定されてしまい、結論としては、取戻しはできないことになります。
2,000万円を受け取っていることが明らかであり、その2,000万円以外に相続財産がないような場合は、遺留分の侵害としていくらかの請求ができるかもしれませんが、全額を取り戻すことはやはり出来ません。
2,000万円以外にも義姉に渡った金銭があり、それを証明できるのであれば、その全体の金額のうち、一定割合を請求することができる場合もあります。
もっとも、義姉の資産がなにもないような場合は、裁判を起こして請求をしても何も回収することはできません。
以上のように、残念ながら全ての相続財産を一度に簡単に調べる方法は存在していません。また、一旦、相手のもとに渡った金銭を取り戻すことは容易ではなく、その方法があるとしても、自ら弁護士を雇って、証拠を集め、裁判を起こすことも必要になります。弁護士を付ければ必ず証拠が集まるわけでもなく、必ず裁判に勝てるわけでもありません。費用倒れになってしまう可能性もあります。
現在の法制度では、分かりやすく言えば、隠した者勝ちの状況になってしまう場合もあります。
隠された財産を調べる方法が限られており、全てを調べる尽くすことは出来ない場合が多いのです。
いままでの経験や他の事例などを基に検討を行い、いくつかの手段を組み合わせて調査を進め、請求を行い、回収まで行うことができた事例もありますが、もっとも確実な方法は、やはり生前から財産状況を把握しておくこととなります。