(※写真はイメージです/PIXTA)

贈与の証拠を残すために作成する書類である「贈与契約書」。贈与自体は口頭でも成立しますが、書面を残さなかったことで、のちのち税務署から狙われることも……。本記事では、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、贈与契約書の作成方法とともに、作成すべき理由を解説します。

贈与契約書作成時の注意点

(※写真はイメージです/PIXTA)
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贈与契約書を作成する際には、どのような点に特に注意すればよいのでしょうか? 注意点は主に次のとおりです。

 

内容をよく理解したうえで署名捺印する

贈与契約書に限ったことではありませんが、契約書などの書面に署名や捺印をする際には、内容をよく理解したうえで行うようにしましょう。たとえば、贈与者としてはA土地を贈与するつもりであったものの、契約書には「B土地を贈与する」と書かれているかもしれません。

 

意図とは異なる内容であっても、署名や捺印をしてしまうと、あとから覆すことは容易ではありません。贈与をする場合、その当事者は近しい間柄であることが多いと考えられます。ですが、もしそうであったとしても、内容をよく読まずに署名捺印をしてしまうことは避けましょう。

 

名義変更に必要な際には財産の特定に注意する

土地や建物などを贈与する場合には、贈与に伴う名義変更手続きで、贈与契約書の添付が必要となります。しかし、財産の記載があいまいであったり、書き漏れがあったりすれば、名義変更ができず、手続きが煩雑となる可能性があるでしょう。

 

たとえば、当人同士では「北区のアパート」や「隣の駐車場」などで話が通じていたとしても、このような表記では、どこの不動産なのか分からず、登記をすることはできません。そのため、あらかじめ法務局から全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せて、次の事項の記載で対象の不動産を特定します。

 

■土地の場合

・所在

・地番

・地目

・地積

 

■建物の場合

・所在

・家屋番号

・種類

・構造

・床面積

 

名義変更が必要となる財産を贈与する場合には、第三者が見て、その財産が特定できるように記載しましょう。

 

印紙の貼付が必要となることがある

印紙税とは、契約書や領収証などの書類に貼付することで納付すべきとされている税金です。すべての書類に印紙の貼付が必要というわけではなく、印紙を貼るべき書類は、印紙税法で定められています※1。まず、現金や預貯金、自動車などの贈与契約書では、印紙の貼付は不要です。

 

一方、不動産や船舶などの贈与は印紙を貼るべきケースに該当し、200円の印紙を貼らなければなりません。なお、印紙税の額は契約書の記載金額によって決まることから、「贈与であっても土地の評価額などを書いてしまえば印紙税が高くなる」などと誤解されているケースもあるようですが、そうではありません。

 

贈与はそもそも無償契約であり、贈与契約書に土地の評価額などを記載したからといって、その評価額が印紙税計算上の「記載金額」となるわけではありません。このことは、国税庁のホームページにも明記されています※2

 

「連年贈与」とならないよう注意する

贈与契約書を作成する際には、連年贈与とされないように注意しなければなりません。まず理解しておくべきなのは、贈与の成立は「お金が動いたとき」ではなく、双方が「あげます」「もらいます」と合意をした時点であるということです。

 

たとえば、2023年1月1日に「100万円をあげます」「もらいます」と合意をして100万円を渡したのであれば、2023年に100万円を贈与したといえるでしょう。

 

一方、同じ2023年1月1日に100万円を渡したのだとしても、合意の内容が「1,000万円を贈与します。まず100万円は2023年1月1日に渡して、2024年に100万円、2025年に100万円……と10年にわけて渡します」「もらいます」という合意だったのであれば、これは2023年に1,000万円を贈与したこととなります。

 

つまり、2023年1月1日1,000万円を贈与したうえで、実際の支払いは10年の分割払いにしただけということです。このような贈与は、一般的に連年贈与といわれています。

 

贈与税は、原則として1月1日から12月31日までの贈与に対して課税されます。ただし、1年あたり110万円という非課税枠があるため、受贈者が1年間に受けた贈与がこれ以下であれば、結果的に贈与税はかかりません。

 

そのため、受贈者が2023年中に受けた贈与が100万円のみであれば、贈与税はかからないでしょう。一方、連年贈与とされた場合には、2023年中に1,000万円の贈与を受けたものとして、多額の贈与税がかかりますので注意が必要です。

 

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