(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書には、いくつか形式がありますが、このうち公正証書遺言にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 今回は、手軽に作成できる自筆証書遺言と比較した公正証書遺言のメリットについてAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

遺言の方式は主に3種類

遺言書には、死亡の危急が迫った際などに利用する「特別方式」のものと、通常時に利用する「普通方式」のものが存在します。このうち普通方式の遺言には次の3つが定められています。

 

・公正証書遺言

・自筆証書遺言

・秘密証書遺言

 

遺言書は、本人の死亡後に効力を生じるものであるとの性質から、形式的な要件が非常に重視されます。


民法で定められた遺言の方式から外れたものは、たとえ遺言のようなことが書かれていても「遺言」としての法的な効力はないことになってしまうので、要件にはよく注意しなければなりません。

 

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証人の関与のもとで作成する遺言書です。確実性が高く、もっとも無効となりにくい遺言方式であるといえるでしょう。公正証書遺言を有効に作成するには、原則として次の要件を満たさなければなりません(民法969条)。

 

1. 公証人と2名以上の証人の立ち会いがあること

2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること

3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させること

4. 遺言者と証人が筆記の正確なことを承認した後で、各自が原本に署名と押印をすること(ただし、遺言者の筆記が難しいときは公証人の代筆可)

5. 公証人が原本に署名と押印をすること

 

自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自書して作成する遺言書です。手軽に作成できる一方で、要件を満たせず無効となるリスクが低くありません。自筆証書遺言の主な要件は、次のとおりです(同968条)。

 

1. 遺言者が遺言の全文と氏名、日付を自書して、押印すること

2. 自書でない財産目録を添付する場合には、その目録のすべてのページ(両面に印字した場合には、両面とも)に遺言者が署名押印すること

3. 加除訂正は遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更の場所に押印すること

 

なお、自筆証書遺言については令和2年(2020年)7月10日から法務局で保管してもらえる制度がスタートしています。保管制度を活用することで、紛失や偽造などのリスクを減らすことが可能となるでしょう。

 

秘密証書遺言とは?

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られずに作成できる遺言書です。遺言者があらかじめ作成し署名捺印した遺言書を封印した状態で公証役場へ持ち込み、公証人と証人に対して確かにこれが自分の遺言書であることなどを宣誓して保管してもらいます。

 

秘密証書遺言では公証人がその内容に関与するわけではないため、内容があいまいであるなどして手続きに使用できないリスクは低くありません。また、公証役場へ出向く必要があり、費用や手間がかかります。

 

このように、デメリットと比較してメリットが大きくないことから、利用件数はさほど多くないのが現状です。

 

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