「赤字部門から撤退」すると“倒産危機”が加速する!? 判断を誤らないための「会社の利益」のとらえ方【公認会計士が警告】

「赤字部門から撤退」すると“倒産危機”が加速する!? 判断を誤らないための「会社の利益」のとらえ方【公認会計士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社にとって利益を上げることはきわめて重要ですが、「赤字部門からの撤退」が、かえって取り返しのつかないダメージをもたらすおそれがあります。どういうことなのか。『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)の著者で「IT」に精通した公認会計士である金子智朗氏が、会社の利益の最大化という見地からの「会社の数字」の合理的な読み方を解説します。

もし部門Cを撤退させたらどうなるか

個別固定費と共通固定費配賦額の違いは、固定費の発生源が局所的か横断的かの違いです。

 

個別固定費は各部門において局所的に発生する固定費です。したがって、部門が存続しているうちは固定的に発生しますが、部門がなくなれば丸ごとなくなる可能性があります。

 

共通固定費配賦額は、部門横断的に発生する固定費や部門外で発生する固定費が配賦されたものです。ですから、ある部門をなくしても総額は変わりません。

 

部門Cを撤退させたときになくなる費用は個別固定費までですから、利益で言えば部門利益がなくなることになります。

 

少々正確に言うと、個別固定費がなくなると言える前提は給与もなくなることですから、撤退させたときにリストラすることが前提になります。もしリストラしないとすると給与は残りますから、その分、失われる利益は部門利益の額よりも大きくなります。

 

したがって、部門利益は「撤退したときに失われる利益の最小値」です。少なくともこれだけの利益が失われるということです。

「配賦後の利益」だけを見て部門撤退を判断してはいけないワケ

さて、本ケースもそうであるように、部門別損益計算書ではどこかで配賦が行われています。何らかの切り口で細分化したセグメントに、セグメント横断的に発生している費用を割り振る必要があるからです。

 

ただ、ほとんどの人は、どこでどのような配賦が行われているかということはほとんど知らないまま、配賦後の最後の利益を見ます。人はとにかく最後を見るという強い習性があるからです。

 

ここでは配賦は各部門に均等になされていますが、配賦方法は他にもあり得ます。たとえば、各部門の人数比で配賦するという方法をよく見受けます。他にも各部門の専有面積比率など、いろいろあります。

 

ここで言いたいことは、「どういう配賦方法が望ましいでしょうか?」などということではありません。配賦方法は無限に存在するということです。そして、すべては人為的な計算方法に過ぎないということです。

 

配賦方法を変えれば、部門Cの営業利益を黒字にすることなど簡単にできます。

 

そんないくらでも変わり得る配賦後の利益を見て、「赤字だから部門Cは撤退」と多くの人は言うのです。

 

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管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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