「赤字部門から撤退」すると“倒産危機”が加速する!? 判断を誤らないための「会社の利益」のとらえ方【公認会計士が警告】

「赤字部門から撤退」すると“倒産危機”が加速する!? 判断を誤らないための「会社の利益」のとらえ方【公認会計士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社にとって利益を上げることはきわめて重要ですが、「赤字部門からの撤退」が、かえって取り返しのつかないダメージをもたらすおそれがあります。どういうことなのか。『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)の著者で「IT」に精通した公認会計士である金子智朗氏が、会社の利益の最大化という見地からの「会社の数字」の合理的な読み方を解説します。

営業利益が赤字の部門を撤退すると会社が赤字に!?

こういうときは、客観的な事実に立ち返って考えるのが一番確実です。

 

客観的な事実とは、本社で6億円という本社費が発生しているという事実です。

 

[図表2]を見れば、その本社費を、部門利益と名付けた各部門個別の利益が協力し合って回収しているという構図を見ることができます。

 

この部門利益は、本社費という共通費を回収することに貢献しているので、一種の貢献利益です。

 

本ケースにおいて、部門利益は全部門ともプラスですから、どの部門も本社費の回収に貢献しています。

 

それなのに、配賦後の営業利益が赤字だという理由で部門Cを撤退させたらどうなるでしょうか。少なくとも部門利益の1.9億円が失われるのです。

 

全社の営業利益は1.1億円ですから、ここから1.9億円の利益が失われたら、全社の営業利益はマイナス0.8億円になります。全社的に赤字に転落するのです。

 

これは、オアシスだと信じてその方向に走ってみたら、実は崖だったというような話です。

 

誰も崖だとは思っていませんから、みんなで全力疾走して、思いっきり赤字という崖に落ちるのです。

 

本当に多くの人が「営業利益が赤字だから部門Cはやめた方がいい」と言います。そして、みんなで一生懸命になって部門Cを潰しにかかります。

 

その結果起こることは、自らの手で全社を赤字に転落させることなのです。悪気もなくやりますから、質の悪い話です。

 

本ケースでは部門利益がすべてプラスですから、積極的に撤退すべき部門はありません。

 

ただし、強化したい部門に経営資源を集中させるために、あえてどこかの部門を撤退させるということであれば、撤退はあり得ます。定量的にも妥当性を持つ可能性があります。

 

「積極的に撤退すべき部門はありません」と言ったのは、そういうことを考えずに、ただ単に部門Cを撤退させたら、確実に全社利益は悪化するということです。

 

 

金子 智朗

ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表

公認会計士

 

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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