経営者・ビジネスマンにとって「会社の数字を意識して動けるか」は非常に重要ですが、それは「決算書類を読める」こととはまったく違います。本記事では、「IT」に精通した公認会計士で、会社の利益の最大化という見地からの「会社の数字」の読み方を提唱する金子智朗氏が、著書『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)から、「会社の数字」の合理的な読み方を解説します。
余裕があるときは「ボーっとしている」のが正解なワケ
確かに、仕事をせずにボーっとしているのは気まずいものです。上司にも「何ボーっとしてるんだ! そんな暇があったら仕事しろ!」と怒られるでしょう。
一方、汗水垂らして一生懸命働く姿は常に称賛の対象です。褒められることはあっても、怒られることはまずありません。上司からも、「あいつはよく頑張ってるな。よしよし」と思われ、人事評価も上がるでしょう。
これが普通の仕事観です。道徳観と言ってもいいかもしれません。
しかし、それは全くの感情論です。論理的には、そのとき、その工場ではボーっとしているのが正解だったのです。もしくは、暇なら休んでしまうのが正解です。
もし、製品単位コストの低減が製造部門の重要なKPIになっていたら、なおさら一生懸命になって製品を作ったでしょう。たくさん作ることが単位コストの低減につながるからです。人は採点基準通りに行動するのです。
こういう過ちを犯す根底にあるのは、量産効果に対する不正確な理解です。単に「たくさん作ればコストが下がる」と捉えていると、こういうことになります。
下がるのは単位コスト。総コストは必ず増える。そして、「単位当たり」とは「製造量単位当たり」であって、売れるかどうかは別次元の問題です。
これをすべての工員が正確に理解し、自らの行動に反映させることを期待するのは無理な話です。無理な話だからこそ、しかるべき人が正確に理解し、正しいKPIに反映させるということが重要です。
金子 智朗
ブライトワイズコンサルティング合同会社
代表
ブライトワイズコンサルティング合同会社
代表
コンサルタント、公認会計士、税理士
東京大学工学部、同大学院修士課程修了。日本航空㈱において情報システムの企画・開発に従事しながら公認会計士試験に合格後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現PwCコンサルティング)などを経て独立。現在、ブライトワイズコンサルティング合同会社代表。
会計とITの専門性を活かしたコンサルティングを中心に、企業研修や各種セミナーの講師も多数行っている。
名古屋商科大学大学院ビジネススクールの教授も務める(ティーチング・アウォード多数回受賞)。
『「管理会計の基本」がすべてわかる本』(秀和システム)、『ストーリーで学ぶ管理会計入門』(Kindle)、『ケースで学ぶ管理会計』『理論とケースで学ぶ財務分析』(ともに同文舘出版)、『教養としての「会計」入門』(日本実業出版社)など、著書多数。
ホームページ:https://www.brightwise.jp
オンライン会計事典:https://www.kaikeijiten.com
YouTubeチャネル:公認会計士・金子智朗 簿記2級講座〈商業簿記編〉
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連載「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング