(※画像はイメージです/PIXTA)

足元の米ドル/円は、5月30日に1ドル141円手前まで円安が進むと、その後は一転、一時138円台をつける場面も見られるなど、方向感の読みづらい相場展開となりました。こうした動きの背景と今後の見通しについて、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

今週の注目点…翌週に控えたFOMC巡る思惑

では、先週からの「米金利低下=米ドル下落」はさらに広がるでしょうか。

 

米債務上限交渉を受けた歳出削減合意は、需要抑制効果が予想されるものです。そして3月以降の金融システム不安浮上を受けた信用収縮も需要抑制効果と考えられます。

 

この結果、2月以前まで、インフレ対策のための需要抑制はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ「一本足打法」のような構図は大きく変わってきた可能性があるでしょう。

 

別な言い方をすれば、インフレ対策の米利上げの役割はほぼ終わった可能性があるのではないでしょうか。それどころか、金融システム不安に伴う信用収縮、それに歳出削減も重なり、米景気の減速、さらに景気後退(リセッション)が現実味を帯びるようなら、金融政策はいよいよ利下げへの転換が現実味を帯びていく可能性があるでしょう。

 

ただし現在のところ、米景気の顕著な悪化が確認されるまでにはいたっていません。

 

定評の高いGDP予測モデルであるアトランタ連銀のGDPナウは、4~6月期のGDP成長率予想を1日に前期比年率2%と更新しました。これを見る限り、3月の金融システム不安浮上以降も、米景気の悪化は、ある意味では予想以上に限定的にとどまっている可能性がありそうです。

 

そういったなかでは、FRBの利下げへの転換を織り込む形で米金利がどんどん低下するのも、まだすぐということではないでしょう(図表4参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米2年債利回りとFFレート(2018年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

そうであれば、「米金利低下=米ドル下落」も、少なくとも今週は限られる可能性が高そうです。

 

翌週にFOMCやCPI(消費者物価指数)などのインフレ指標発表と言う注目イベントを控え、今週はそれらに比べると注目度の高い材料はなさそうですから、基本的にはFOMCの見通しで一喜一憂する展開となりそうです。

 

米ドル/円は、137~142円中心で上値が限られ、徐々に下値を模索する展開を想定しています。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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