同性パートナーに相続するには「遺言書」が不可欠
(2)遺贈の活用
ア.相続人以外にも財産を残せる
被相続人は、遺言により、相続人以外の者に対して自己の財産を与えることが可能です(民法964条)。
遺贈には、大きく分けて包括遺贈(遺言者の財産の全部又は一部を一定の割合にて示して遺贈する)と特定遺贈(遺言者の所有する特定の財産を具体的に示して遺贈するもの)があります。このうち、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するものとされておりますので、なかでも財産の全部の遺贈を受けた場合は、相続人同様の権利義務を負うことになります。
もちろん、包括受遺者は、代襲制度がない、遺留分が認められないなど、相続人と同等の取扱いではありませんが、権利義務の観点からは相続人と同様ですので、同性のパートナーに相続させたいという要請には、この全部包括遺贈の方法を執ることにより応えることができるでしょう。
土地・建物のみなどの「特定遺贈」の場合は、「相続財産管理人」に注意
イ.遺贈の活用方法
もっとも、全部包括受遺者の場合は、義務をも承継することから、債務が多い場合などは、場合によっては、居住する場所だけを確保したいとして、土地建物だけを特定遺贈するという方法も考えられます。
しかしながら、この場合に注意しておかなければならないことは、遺贈による権利変動については、第三者対抗要件が必要とされる点と被相続人に相続人がいない場合には相続財産管理人の選任が必要とされる点です。
前者については、遺贈は、「意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはない」から、「登記をもって物権変動の対抗要件とするとした」判例(最二小判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁)がありますので、特段問題はなかろうかと思われます。
後者に関し、全部包括受遺者が存在している場合については、民法951条にいう「相続人のあることが明かでないとき」に該当しないとの判例(最二小判平成9年9月12日民集51巻8号3887頁)がありますが、一部包括遺贈や特定遺贈の場合には、相続人不在と扱われることから(一部包括遺贈については見解が分かれます。)、相続人不存在として、相続財産管理人の選任が必要です。
そうすると、相続財産管理人による清算手続の一つとして、特定遺贈がなされるため、遺言どおりに遺贈がなされるのかどうか不確定なところがあり、無事になされたとしても期間や費用がかかることが予想されます。
特定遺贈の場合には、上記のようなことを想定しておく必要があります。
なお、上記相続財産管理人が選任される事案において、遺言執行者を選任しておいた場合の取扱いがどうなるかが問題となりますが、相続財産管理人の権限が優先され、遺言執行者の権限は相続財産管理人の業務終了まで一旦休止という取扱いとされるようですので、遺言執行者を選任していてもそれほど大きな違いはないといえそうです。
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