(※写真はイメージです/PIXTA)

当事者をはじめとした草の根運動により、LGBTQへの理解が徐々に広まりつつある昨今。しかし、いまだ同性婚の法制化にはいたっていません。こうした状況で、「自分の死後は同性パートナーに資産を遺したい」という理由で裁判になった事例があります。一体どのような判決結果が出たのでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、解説します。

「死因贈与契約」による相続も可能

(3)「死因贈与」と「遺贈」の違い

贈与者は、生前に自己の財産を、自身の死亡を条件として贈与する契約を締結することができ、このような契約は死因贈与契約と呼ばれ、実質的には遺贈を同様の効力があることから、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されています(民法554条)。

 

もっとも、死因贈与と遺贈は、

 

①要式行為であるかどうか、
②一方的な意思表示か意思表示の合致が必要か

 

という点で大きな違いがあり、この違いが場合によっては結論を左右することもあるので、注意が必要です(無効な遺言を死因贈与として有効と判断した例(東京高判昭和60年6月26日判時1162号64頁。))。

 

本件でも、遺贈のみならず、死因贈与契約による方法が考えられます。

 

相続人がパートナー以外にいる場合は「遺留分」に注意

(4)遺留分への配慮

上記(2)、(3)により、遺贈や死因贈与がなされた場合にあっては、相続人が他にいる場合には、遺留分への配慮が必要であるのは、他の案件と同様です。

 

パートナーを「養子」とすれば法的に「相続人」となるが…

(5)養子縁組について

上記のような財産の移転行為のみに頼るだけでなく、法定の血族関係である、養子縁組の手続きによれば、当然に法的にも相続人と認められますので、このような手続きを執っているというカップルもいるかもしれません。

 

しかしながら、お互いにカップルとして、婚姻関係を望んでいるのですから、気持ちと異なる関係(親子関係)を結ぶのは違和感が否めませんし、それを乗り越えて養子縁組を行ったとしても、縁組意思がない等の理由で、法定相続人らから、養子縁組無効確認の訴え(人事訴訟法2条3号)が起こされるおそれも否定できません。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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