(※写真はイメージです/PIXTA)

当事者をはじめとした草の根運動により、LGBTQへの理解が徐々に広まりつつある昨今。しかし、いまだ同性婚の法制化にはいたっていません。こうした状況で、「自分の死後は同性パートナーに資産を遺したい」という理由で裁判になった事例があります。一体どのような判決結果が出たのでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、解説します。

「養子縁組」の有効性をめぐって…裁判の結果は

 

この点、同性の受刑者間における養子縁組について、専ら外部交通を確保するためになされたものとして、養子縁組の有効性が争われた事案について、

 

「成年同士の養子縁組」における、「養子縁組に求められる縁組意思における社会通念上親子と認められる関係というのは、一義的には決められず、相当程度幅の広い」ものとした上で、

 

「成年である養親と養子が、同性愛関係を継続したいという動機・目的を持ちつつ、養子縁組の扶養や相続等に係る法的効果や、同居して生活するとか、精神的に支え合うとかなどといった社会的な効果の中核的な部分を享受しようとして養子縁組をする場合については、取りも直さず、養子縁組の法的効果や社会的な効果を享受しようとしているといえるのであるから」、縁組意思が認められるとし、

 

「年齢差のない成年同士の養子縁組にあっては、典型的な親子関係から想定されるものと異なる様々な動機や目的も想定され得るものであり、その中で、同性愛関係を継続したいという動機・目的が併存しているからといって、縁組意思を否定するのは相当ではない」と判断した裁判例(東京高判平成31年4月10日裁判所HP)が参考になります。

 

上記裁判例はあくまで事例判決であって、同性カップルにおける養子縁組をすべて有効とするものではありませんが、近年の同性カップルに対する社会的な認知度の高まり等に応じて、本来的には婚姻関係であるところを養子縁組にせざるを得ない点を捉えて、養子縁組の意思がないという単純な発想による判断がなされていない点は、注目に値するといえるでしょう。

 

養子縁組による方法で、相続人たる地位を確立するという方法も検討に値するということがいえるでしょう。

 

なお、現行法においては、養親子関係にあった者は、離縁後も婚姻はできないことから(民法736条)、仮に、性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律により戸籍上の性別を変更し、婚姻が可能となったとしても、かつて養子縁組をしていたということをもって、婚姻ができないことには注意しなければなりません。

 

(6)税務面

相続人ではないことから、課税上の控除の点や相続税の2割加算など、取扱いが異なります。

3.結論

遺言書の概要としては冒頭に記載しましたが、具体的には下記のとおりとなり、相談を受けた場合には、下記のような遺言書案を提示することになるかと思います。

 

第〇条 遺言者Aは、遺言者の有する一切の財産を、Bに包括して遺贈する。

 

または、

 

第○条 遺言者Aは、次の不動産及び金融資産を、Bに遺贈する。

第○条 遺言執行者の指定

第○条 遺留分侵害額請求の順序の指定

 

<参考文献>

・堀越みき子「相続不存在の実務」判タ996号98頁(平成11年)

・片岡武=管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務〔第4版〕』504頁(日本加除出版、2021年)

・片岡武=金井繁昌=草部康司=川畑晃一『家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務〔第2版〕』560頁(日本加除出版、2014年)

 

 

東京弁護士会弁護士業務改革委員会

遺言相続法律支援プロジェクトチーム

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

ぎょうせい

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