「カブトムシ」で社会課題を解決、株式会社TOMUSHI
【社会課題❶タンパク質危機】
●社会課題解決のロジック…驚異的なスピードで、畜産物の3〜4倍高タンパク質なカブトムシを生産できる。
●社会課題の規模…約2倍(年間約1.8億トン)
⇒2050年の世界人口(約100億人)で換算した場合に、2005年時と比較して必要なタンパク質の量(国連調査結果より)。
【社会課題❷有機廃棄物の廃棄】
●社会課題解決のロジック…カブトムシが有機廃棄物を食べて処理してくれる。
●社会課題の規模…約2倍(年間約270億トン)
⇒2050年の世界の廃棄物発生量を2000年時(約127億トン)と比較した比率(岡山大学大学院「世界の廃棄物発生量の推定と将来予測に関する研究」より)。
【社会課題❸畜産に起因する環境破壊】
●社会課題解決のロジック…カブトムシの大量生産により大量の飼料や森林破壊が不要になる。
●社会課題の規模…約75~80%
⇒世界中の農地に占める、家畜用の飼料の生産に使われている農地の割合(Greenpeace「Greenpeace livestock vision towards 2050」より)。
世界初、廃棄物をエサに「カブトムシ」の大量生産に成功
「昆虫の力でゴミを資源化し、世界の資源不足を解消する」をビジョンに掲げるTOMUSHIは、カブトムシに廃棄物を与えることで、世界ではじめて低コストでカブトムシの大量生産に成功した企業です。しかも、同社が生産しているのは一匹数万円もの金額で取引される世界最大級の「ヘラクレスオオカブト」などの貴重なカブトムシです。
ゴミを大量に食べるという特性を累代する(代を重ねる)ことによって生み出しました。さらに、同社のカブトムシはマイナス18度の環境にも耐えられるだけでなく、成長速度が速いのが特長。通常のカブトムシは1年かけて成長するところを、3ヵ月で同じ大きさまで成長することから、「3ヵ月で1,000倍」という驚異的なスピードで生産されているのです。
同社が生産を行うカブトムシのエサは、100%廃棄物。きのこの生産後に出る廃菌床*や畜産から出る糞尿、廃棄野菜や果物、食品廃棄物などを独自技術で特殊加工してエサにしています(*廃菌床とは、キノコを栽培した使用済み培地のことで、細胞や微生物が成長しやすいよう人工的に作られた環境)。
大量の廃棄物の処理は、世界規模の社会課題の一つです。人口増加に伴い、2000年時は約127億トンだった廃棄物は、2050年には約270億トンと2倍以上にまで増加するといわれています。同社では、廃棄物をカブトムシに食べさせることで年間6万匹のカブトムシを生産し、同時にカブトムシによって年間900トンの廃棄物を処理しています。
2018年、カブトムシの飼育に夢中になった双子の兄弟が、好きが高じてカブトムシ販売事業をスタートしたのが同社のはじまりです。事業のスタート資金は祖父母が提供してくれた500万円。2019年には、売上1,000万円分にもなるカブトムシが死んでしまい、倒産の危機に陥ります。
せっかく育てているカブトムシに与えるエサ代がない。その状況で考えたのが、ゴミを食べさせるというアイデアでした。そこから、世界初となる有機廃棄物によるカブトムシの大量生産の研究が始まり、今では廃棄物処理プラントとしての役割を果たしています。