多くのビジネスがもがき苦しむ理由
誰もが成功を目指してビジネスを始めるなか、思い描いていた理想に到達できず志半ばで事業をたたむ起業家が後を絶ちません。
中小企業庁によると、2022年の全倒産件数は6,428件。1日あたり約18社もの企業が倒産しています。そして、倒産理由の第1位は「販売不振」で4,525件(図表1)。続いて第2位が、経営悪化を改善できずに倒産してしまう「既往のしわよせ」(757件)となっており、その他の理由と比較しても「販売不振」は突出しています。また過去6年にわたり企業が倒産する理由の第1位は、そもそも売上が立たない「販売不振」であることからも、いかに「売れない」ことが致命的な問題であるかがわかります。
■なぜうまくいかないのか?
図表2のような、様々な問題が彼らの成功を阻んでいます。
では、そもそもなぜこれらのような問題を抱えてしまうのでしょうか。その原因は「アイデア追求思考」にあります。
Googleやユニクロさえ失敗…アイデア追求型が陥る罠
アイデア追求思考の「アイデア追求型」は、
・新しい仕組み
・流行りのトレンド
・これから来るトレンド
・イケてるビジネスモデル
・凄い技術
・上手くいくノウハウ
・まだ誰も扱っていない商品
・画期的なサービス
といったあらゆる情報、まだ誰も知らない(と思い込んでいる)情報を収集して、ビジネスがうまくいくアイデアばかりを追い求めてしまいます。なぜなら、成功者が成功しているのは、きっと自分たちがまだ知らないアイデアのおかげであり、新しいアイデアや誰もやっていないアイデアさえあればうまくいくと信じ込んでしまっているからです。
このように、アイデア追求型の起点は、いつも「アイデア」です。
そして、社会のニーズや欲求よりも、「このビジネスモデルなら!」「この仕組みなら!」と思いついたアイデアや、発見した(と思い込んでいる)アイデアがうまくいくことを証明したいという感情が強い傾向にあります。その結果、いくらビジネスに情熱や意欲があっても、アイデア追求型は需要と供給のバランスを冷静に見られなくなっていたり、無視したりしてしまいます。そして、そのままアイデア優先でビジネスを始めてしまうので、苦境に立たされています。
米国の調査・分析会社CBInsightsやその他複数の調査でも「スタートアップの失敗理由」の第1位は「市場に需要がなかった」となっており、いかに多くのビジネスが需要を疎かにした結果、失敗に終わっているかがわかります。
■市場参入パターン:需給バランスを無視して苦しむアイデア追求型の典型例
このように、需要と供給のバランスを無視して苦しむ、典型的な市場参入パターンが次の3つです。
まずは、①「需要あり、新規性なし」です(図表3)。これは例えば、あなたがこれからコンビニビジネスに参入するようなパターン。大手競合がいる市場に分け入り、店舗数を増やしてビジネスを拡大できるほどの需要は市場にありそうでしょうか。
街の至る所にコンビニが溢れ、コンビニの向かいにはまた別のコンビニ。ちょっと歩いたら、また別のコンビニ。買い物には便利だけれど、数が多すぎる…そんなことを思ったことがある方も多いでしょう。日本国内のコンビニ数はすでに飽和状態にあり、2017年に5万5千店舗に達して以降、2023年1月時点まで店舗数がほぼ増えることなく停滞しています(図表4)。
そして、それだけではありません。年間売上高は、2015年に5万3千店舗に達した際に10兆円の大台に到達したものの、以降7年の長期にわたって停滞を続けています。コンビニは、私たちの生活インフラともいえるような需要があるビジネスです。しかし、このように十分に需要が満たされていて、すでに供給過剰ともいえる市場では、競合と奪い合いの過当競争をするしかありません。
次に、②「需要過少」です(図表5)。これは、例えばデジタルカメラのように、かつては大きな需要があっても、現在は需要が大幅に縮小しているパターンです。スマートフォンの登場によって、デジタルカメラの需要は10年間で約90%も縮小(図表6)。このような過少市場は商品・サービスに新規性があってもなくても、厳しい市場です。
最後に、③「需要なし、新規性あり」です(図表7)。これは、Googleが2014年に一般向けに発売したスマートグラス「Google Glass」や、ユニクロのファーストリテイリングが2年を待たずに撤退した野菜事業「SKIP」のパターンです。
「Google Glass」は発売当時、近未来的で斬新なウェアラブルデバイスに世界の注目が集まりました。しかし、プライバシーの問題や高価格であることなど、消費者が求めるものとのズレから伸び悩み、日本に上陸することなく2015年に販売終了となりました。
「SKIP」は2002年11月に事業を開始。「ユニクロの野菜」としてこちらもその新規性から注目を集めました。しかし、ユニクロの仕組みを使って安くていい野菜を届ければうまくいくと考えられていた「SKIP」は、利用者が求めるものとサービスのズレによって、販売開始から2年に満たない2004年4月、24億円の特別損失を出して撤退しています。(参照:日経BP『世界「失敗」製品図鑑』/2021年10月)
そして、需要よりも、商品・サービスや仕組みのアイデアが優先された結果失敗に終わっている、Googleやユニクロのような大企業でもうまくいかないこの3つ目のパターンこそが、実は最もアイデア追求型の陥りがちなパターンなのです。
■市場参入パターン:アイデア追求型と対照的な「成功例」
しかし、その一方で、アイデア追求型とは対照的に、「需要」と「新規性」がある巨大な市場で成功しているのが、④アイデア追求型と対照的な「需要過剰、新規性あり」の場合(図表8)。例としては、ワークマンのようなパターンです。ワークマンは2018年、需要があるのに供給が満たされていなかった、4,000億円規模の巨大な「空白市場」=「高機能・低価格なアウトドアウェア市場」を発見。参入に成功して急成長し、店舗数はユニクロを超え、47都道府県944店舗と増加しています(2022年3月時点、図表9)。
ワークマンが発見したこの巨大市場について、ソフトバンクの孫正義氏は「よく国内で4,000億円の空白市場をみつけた」とコメント。ユニクロの柳井正氏は「『常々私は、その市場をやったらいいんじゃないか』と社内で言っていた。ところが『ワークマンにやられた』」とコメントしていた事を、ワークマン専務取締役土屋哲雄氏自身が話されています。(参照:ダイヤモンドオンライン/土屋哲雄『ワークマン大躍進の秘密は「しない経営」と「エクセル経営」』/2021年1月20日)
巨大な空白市場に誰よりも先んじたワークマンは、アパレル大手の存在を物ともせず、競合なしの独走状態で成長し続けています。このようなビジネスチャンスに溢れる巨大な空白市場をあなたも見つけ、ビジネスを急成長させることができたらいいなとは思いませんか。
実は、このような需要があるのに供給がまったく足りていない巨大な市場はいくつもあります。そして、そんな空白市場で起業に成功し活躍しているのが、「社会課題解決思考」の「社会課題解決型」です。
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