グローバル大企業は21世紀の荘園
新型コロナウイルスによるパンデミックが拡大した2020年以降、各国が都市封鎖(ロックダウン)に入る中でグローバル大企業は、いち早く従業員向けの対応を打ち出した。
コロナウイルスのワクチン提供を例にとると、米アマゾンは、最前線で働く従業員が物流施設内で接種できる体制を2021年3月時点で構築し、接種拠点数を同年5月時点で米国とカナダの合計250カ所に拡大した。
米国内では同年3月1日時点でのワクチン接種率は9%強、同年4月1日時点は20%弱であったことから、アマゾンの動きの早さが明らかである。
なお、当時の日本は、医療関係者へのワクチン提供完了にようやく目途が立ち始めていた頃だった。
また、ワクチン接種時に有給休暇を提供するだけでなく、接種奨励金を支給する取り組みも広がった。例えば、米国の食品スーパーのクローガーは100ドル(約1万3,000円)、ウォルマートは接種証明を出した従業員に75ドル、アマゾンは接種した新入社員に100ドルなどである。
米国内では、ワクチン未接種の従業員の解雇も行われ、大手メディアCNNや大手金融のシティグループなどでは、雇用主と従業員が対立する事例もあった。
米国では、企業が従業員にワクチン接種を求めるのは合法であり、上記2社のケースでも宗教上や医療的な理由による接種免除は認められていた。もとより、グローバル大企業はグローバルな事業展開に必要な多様性を前提に、組織が運営されている。
コロナ禍以前で既に、日本企業に比べて業務の標準化、デジタル化(DX)が圧倒的に進み、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の整備を通じて、有事への備えが整っている企業が多い。
エンワールド・ジャパンの調査によると、日本国内においても外資系企業の約4割は、コロナウイルス流行前からリモートワークを導入していたのに対し、日系企業の導入率は約3割だった。
コロナ禍発生後においては、外資系企業のオフィス勤務者の多くがスムーズに在宅勤務に移行したという。
オミクロン株発生前で蔓延防止等重点措置が発動されていなかった2021年11月時点で、出社比率を30%未満に抑えていた企業の割合は、外資系企業の55%に対し、日系企業は37%と後れを取っていた。
また、2020年7月にみずほ情報総研が実施した「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査」によると、コロナ禍において自社のBCPが「機能しなかった」日本企業は約28%にのぼった。
実は、グーグルやアマゾンといった一部のグローバルIT大企業は、コロナウイルス禍でもオフィスの増床を続けた。信頼関係醸成やイノベーション創出にはリアルな場での濃密な対面コミュニケーションが必要と考えているためである。
なお、コロナウイルスの収束など従業員の安全・健康を確保できない限りオフィスを再開しない方針を明確にした結果、社内での混乱は起きなかったと見られる。