「多様性」を前提に組織を運営しているグローバル大企業は、ESGへの対応も速やかです。本稿では、フロンティア・マネジメント株式会社の代表取締役を務める松岡真宏氏と、同社のマネージング・ディレクターである山手剛人氏の共著『ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄』から一部を抜粋し、マイクロソフト社のESGに対する取り組みを例に、グローバル大企業のサステナビリティ活動の状況について解説します。
欧米のグローバル大企業はESG対応もしなやか
ESG推進はアフォーダビリティが伴ういわば“Luxury(贅沢品)”のような取り組みだ。
そして、アフォーダビリティがある欧米のグローバル大企業ほど、ESGを意識して企業活動を行っている。例えば、グローバルIT企業の多くは、製造を不要とするサービスを提供しており、E(環境)の対応において圧倒的に有利だ。
例えば、2030年にカーボンネガティブを目指すマイクロソフトは、他社を巻き込んだサステナビリティ活動を積極的に行う。
そもそも脱炭素の考え方には、次のように3種類のスコープがある。
- スコープ1:自社が排出するCO2(直接排出)
- スコープ2:自社が使う電気やガスの使用に伴って排出するCO2(間接排出)
- スコープ3:仕入れ先や販売先などサプライチェーン全体で排出するCO2(サプライチェーン排出)
マイクロソフトのホームページでは、この3つのスコープに沿った現在の取り組みが紹介されている。
- Transform to Net Zero連合※1を8企業とともに設立
- 5,000万米ドル(約65億円)をエネルギー関連のパートナーに投資
- 世界中のプロジェクトで130万トン分の炭素を購入・除去
- 直接排出(スコープ1)および間接排出(スコープ2)で適用してきた社内炭素価格をサプライチェーン排出量(スコープ3)に拡大
- 2020年には、すべてのスコープにおいて、58万6683トンのCO2を削減
※1 カーボンゼロ経済に向けた事業活動を加速するために先進的な情報やツール、ガイドを提供する連合
GAFAM(グーグル、アップル、メタ〈フェイスブック〉、アマゾン、マイクロソフト)の中でも、唯一製造業を中核とするアップルですら、全事業のサプライチェーンと製品ライフサイクルのすべてにおいて2030年までにカーボンニュートラル達成を計画する。
スコープ1とスコープ2については、既に排出量ゼロを達成済みの同社は、現在、スコープ3でのネットゼロを達成すべく、世界中で部品メーカーなどのサプライヤーに対して、再エネへの移行を促している。
松岡 真宏
フロンティア・マネジメント㈱
代表取締役 共同社長執行役員
山手 剛人
フロンティア・マネジメント㈱
マネージング・ディレクター コーポレート戦略部門 企業価値戦略部長 兼 産業調査部
フロンティア・マネジメント株式会社
代表取締役 共同社長執行役員
職歴
株式会社野村総合研究所、バークレイズ証券会社を経て、1997年にUBS証券会社(現、UBS証券株式会社)に入社し、1999年に株式調査部長兼マネージングディレクターに就任。2003年に㈱産業再生機構に入社し、マネージングディレクターに就任。2007年にフロンティア・マネジメント株式会社を設立し、代表取締役に就任。2012年にフロンティア・マネジメント株式会社の中国現地法人であるFrontier Management (Shanghai) Inc.(100%子会社)の董事長に就任。
著書に『「時間消費」で勝つ!』(共著、日本経済新聞出版社)、『宅配がなくなる日』(共著、日本経済新聞出版社)、『経営コンサルタントが読み解く 流通業の「決算書」』(監修、商業界)『持たざる経営の虚実』『時間資本主義の時代』『「良い投資」とβアクティビズム』監訳、『ESG格差』(日本経済新聞出版社)などがある。
学歴
東京大学経済学部卒業
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載投資家ならSDGsと併せて知っておくべき、ESGを専門家が解説!
フロンティア・マネジメント株式会社
マネージング・ディレクター コーポレート戦略部門 企業価値戦略部長 兼 産業調査部
職歴
1999年にウォーバーグ・ディロン・リード証券会社(現UBS証券株式会社)に入社。2003年に同社株式調査部で小売セクター担当のシニア・アナリストに就任。2010年にクレディ・スイス証券会社に移籍。小売セクター担当のアナリストと消費関連産業の調査グループリーダーを兼務。2017年にフロンティア・マネジメント株式会社に入社。
専門
小売業界
学歴
東京大学経済学部卒業
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