「ROEが低いから日本株はダメ」?
「米国株のROEは20%」というと、「米国株に投資すれば20%近い利回りで回る」とイメージされる方がいらっしゃるかもしれません。あるいは「日本株はROEが低い。だから、ROEが高い米国株に投資をしよう」と思われるかもしれません。どちらも誤解です。
実際には、「ROEをPBRで割る必要があります」。
たとえば、2022年度の米国株のROEは21.5%でした。しかし、前年度末のPBRは4.7倍でしたので、米国株の投資家が得たリターン(1株利益/株価)は「21.5%/4.7」で約4.5%でした。
他方で、日本株の投資家が得たリターン(同)は「9.4%/1.2」で約7.5%でした。すなわち、日本株の投資家が得たリターンのほうが高かったのです。
「投資家リターン」の計算方法
ROEは「1株利益/1株純資産」であり、株主に帰属する資本(≒純資産)の収益性を表す指標です。資本が生み出す利益ですから、「資本のリターン」(資本収益率)です。
ただし、「リターン」といっても、個別企業の株式であれ株価指数であれ、投資家は通常、ROEの「分母」である1株純資産(≒簿価)に相当する金額で株式を買うことはできません。当然ながら、投資家は、時価である株価の分のお金を支払う必要があります。
「支払った価格が持ち値」になりますから、「1株利益/買った値段」=「1株利益/株価」こそが、投資家にとってのリターンです。以下、これを「投資家リターン」と呼ぶことにします。
ROEをPBRで割ると「1株利益/1株純資産÷株価/1株純資産」=「1株利益/株価」となり、投資家リターンが計算できます。
では、「分母の株価はいくらで売られているのか」と問えば、株価は「1株純資産のPBR倍」で売られています。このことをざくっと言い換えると……
「ROEが20%、すなわち純資産の20%のリターンを出す米国株に投資をしようと思えば、PBRが3倍なので純資産の3倍の値段を支払う必要がある。結果、米国株の投資家リターンは20%/3=6.6%となる、
他方でROEが8%、すなわち純資産の8%のリターンを出す日本株に投資をしようと思えば、PBRが1倍なので純資産と同じ値段を支払えばよい。結果、日本株の投資家リターンは8%/1=8%となる、すなわち、日本株の投資家リターンのほうが高い」
……と表せます。
すなわち、「高いROEを得たければ、たいていは高い価格を支払う必要があり、低いROEでよければ、必ずしも高い価格を支払う必要はない」ということです。
こうみると、改めて「高いROEを求める必要がなぜあるのか」と疑問をお持ちになるかもしれません。