「米国の情報戦」に関する専門家の見解
佐々木 情報戦大国である中国やロシアでは、公式文書で情報戦が定義されています。しかし、米国政府は、公式文書で情報戦を定義していません。なぜ定義しないのでしょうか。
渡部 米国は中国やロシアほど露骨に虚偽を多用する情報戦を行う国ではありません。一方、中露は情報戦の戦略を持ち、軍事に限定しないで政府全体または社会全体の情報戦のアプローチを採用しています。
米国では、情報戦は政治戦の一形態であり、国家が戦略目標を達成し、外交政策目標を推進する手段です。情報戦は、武力紛争には至らないように行われ、情報環境を防護し利用するためになされる軍事および政府の一連の戦い(warfare)です。
米国政府の官僚機構では、情報戦を担当する部署をどこにするかについて明確に決定されていません。冷戦時代における米政府の情報戦の主要担当機関は国務省と米国広報文化交流局(USIA:US Information Agency)でしたが、現在USIAは存在していません。2001年の9・11同時多発テロ以降、軍事作戦としての情報作戦(IO:Information Operation)に関するドクトリンと能力は軍隊が保有しています。
そのため、その情報戦の主役は国防省であるという考え方はありますが、民主主義国家の軍がプロパガンダの実施に関与すべきではないという議論もあり、現在に至っています。
渡部 悦和
元陸上自衛隊 陸将
井上 武
元陸上自衛隊 陸将
佐々木 孝博
元海上自衛隊 海将補
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