米国が特別に編成した「タイガー・チーム」とは
佐々木 米『ワシントン・ポスト』紙によれば、「開示による抑止」を可能にしたのは、バイデン政権がロシアのウクライナ侵略に対処するために特別に編成した「タイガー・チーム」の存在が大きいとのことです(※2)。この「タイガー・チーム」の詳細を見ていきましょう。
※2日本経済新聞「米大統領直轄チーム、対ロ機密を異例開示、侵攻抑止狙う」2022年2月16日https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN100ZS0Q2A210C2000000/(2022年8月26日アクセス)
渡部 「タイガー・チーム」は2021年11月に正式に誕生しました。国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバンが国家安全保障会議(NSC)の戦略計画担当ディレクターに、複数の省庁にまたがる計画策定の指揮をとるよう命じたことが始まりです。
国防省、国務省、エネルギー省、財務省、国土安全保障省に加え、人道的危機を所掌する米国際開発庁、情報機関の高官が「タイガー・チーム」のメンバーです。
「タイガー・チーム」は、ロシアが取り得る様々な行動方針、それに対するリスクと利点などを検討しました。
シナリオには、情報戦、サイバー攻撃、ウクライナの一部だけを占領する限定的な攻撃、全面的な侵略(ゼレンスキー政権を崩壊させ、国土の大半または全部を占領しようとする侵略)まで幅広いシナリオを想定し、攻撃開始から2週間後までの対応策をまとめた「プレイブック」を作成しました。この「プレイブック」を基にして、修正しながら現在もロシアの侵略に対処しています。
以上のような取り組みは、起こり得る事態を予測するのに役立っただけでなく、ロシアの情報戦に先手を打ち、その意図を事前に暴露し、ロシアのプロパガンダ力(りょく)を削ぐのに有効でした。