(※写真はイメージです/PIXTA)

「台湾有事」が懸念されるようになってしばらく経ちます。一部では、中国は「2024年」または「2027年」に侵略を決行するのではという説も囁かれています。しかし、元陸将の渡部悦和氏と井上武氏、元海将補の佐々木孝博氏は、中国は「当面慎重に判断するのでは」と予想しています。はたしてその根拠とは、みていきましょう。※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

露宇戦争が台湾有事(中台戦争)に及ぼす影響

渡部 習近平政権は露宇戦争を真剣に分析し、多くの教訓を得ていると思います。各種報道や論考(※1)によると、中国が露宇戦争から得ている教訓には以下のようなものがあります。

※1.Ying-Yu Lin, What the PLA Is Learning From Russia’s Ukraine Invasion,

https://thediplomat.com/2022/04/what-the-pla-is-learning-from-russias-ukraine-invasion/

 

・ウクライナは大陸国家であり、台湾は島国であるという大きな違いがある。その結果、露宇戦争ではあまり目立たなかった海軍や空軍の作戦が重要である。とくに戦闘機、爆撃機、ヘリコプター、輸送機などの航空戦力の重要性を認識している。

 

・米軍が直接参戦して、台湾軍とともに戦う場合もあるが、ウクライナに対してやっているように、直接の参戦はしない代わりに、兵器の提供、情報の提供などにより台湾軍を支援する場合がある。例えば、人工衛星、早期警戒機、各種電子戦機による支援は重要だ。

 

・人民解放軍はロシア軍と同じように兵站に弱点がある。兵站の問題は人民解放軍に実戦の経験がないことからも明らかだ。兵站を重視する米軍はその豊富な実戦経験を通じて兵站に精通している。

 

・人民解放軍は、サステインメント(維持すること)と兵站の違いを十分に理解していない。サステインメントは、任務を達成するために、重要な物資、人員、機能、サービスを広く提供することだ。兵站はサステインメントの重要な一部である。人に冷淡な中国やロシアの共通の欠陥がサステインメントである。

 

・ロシアと中国の軍の組織と指揮統制要領は共通のものがあり、ロシア軍が露宇戦争で露呈したこの分野の弱点を人民解放軍も持っている。このことがわかっていても、共産党一党独裁に起因する組織の硬直性、上意下達の風潮、指揮の柔軟性の欠如などが改善されるかは疑問だ。

 

・中国は、経済制裁等の経済安全保障の手段については警戒している。しかし、グローバルなサプライチェーンについて言えば、中国はロシアより遙かに深くそのなかに組み込まれている。中国に経済制裁をすると、困るのは中国だけではなく、そのほかの国々も困ることになることを理解している。

 

・情報戦は重要だし、その一部である認知戦、影響工作が重要であることも理解している。ロシアの噓に基づく情報戦に問題が多いことも理解している。

 

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※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

渡部 悦和 井上 武 佐々木 孝博

ワニ・プラス

2022年6月、ワニブックス【PLUS】新書として発刊され好評を博した『ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛』の続編が、読み応えある単行本として登場。3人の自衛隊元幹部が、プーチンとロシアが行っている戦争を「超限戦」と捉え…

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