(※写真はイメージです/PIXTA)

会社は基本、性善説に基づいていて欲しいものです。「悪さはしないだろう」。そう思えるからこそ、経営者は社員を信頼し、裁量を与え、その結果、事業も健全に成長していくはずです。もしも、社員がその暗黙のルールにあぐらをかき、悪事を働いたら…。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、社員の不正行為に対する処罰について、加藤惇弁護士に解説していただきました。

年間で7割以上の不正打刻も「知らぬ存ぜぬ」の社員

相談者の経営者Aさんは、会社のスタッフが不正に打刻を行っていた事実を知りました。期間にして約1年、200回近くにおよぶタイムカードの不正打刻でした。

 

当該スタッフは内勤で、営業で打刻が必要になる場面はありません。ところが、GPS機能付きのタイムカードの履歴を見ると、社外、それも誤差とは言い難い距離の場所で打刻されていたのです。データを見る限り、自宅付近で出勤打刻、帰宅途中に退勤打刻しているのは明らかでした。

 

相談者のAさんは、まさかそんな不正をするスタッフがいるとは思わず、それまでは厳格にタイムカードをチェックしていませんでした。しかし、打刻時間とそのスタッフを社内で見かける時間に違和感を感じ、会社入口に設置した防犯カメラで確認したところ、あきらかに打刻されている時間よりも遅い時間に出社していたのです。

 

愕然としたAさんは、本人にやんわりと打刻データがおかしい事を伝えた上で、「正しい時間に訂正してほしい」と伝えました。ところが、スタッフは「これであっています」の一点張り。そこで、GPSの打刻場所の履歴と防犯カメラの事を伝え、再度正しい時間を教えてほしいと伝えましたが「わかりません」「覚えていません」と絶対に認めようとしません。

 

スタッフは有期契約のパート。仮にこの内容での懲戒解雇や諭旨退職とすると、不当解雇と言われてしまう可能性があります。そこで処分は懲戒停職としました。

 

ところがスタッフは停職明けに出社せず、LINEで「残りの有給を消化したのち、退職したい」と連絡してきたのです。

 

Aさんとしては、スタッフが事実関係を認めないため、正しい勤務時間がわからず、給与の返還請求もできません。おまけに、不正の後処理や急な退職により、会社や他のスタッフに多大な迷惑をかけています。その上、有給まで使おうとするスタッフの姿勢を到底受け入れたくありません。

 

そこで、Aさんはココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

(1)正しい時間がわからないタイムカードの不正打刻にはどのように返還請求すればいいのか。

(2)返還が難しい場合、損害賠償を請求する事は可能か。

(3)不正打刻を認めないスタッフを詐欺として、警察に被害届を出すことは可能か。

賃金の返還を求めることはできるか

実際には働いていないのに不正打刻によって労働時間として扱ってしまった時間に対応する部分については、支払った賃金の返還を求めることができます。

 

返還を求めるにあたっては、最初に法的に返還を求める金額を計算する必要があります。返還を求める金額を計算するには、労働時間として処理されている時間のうち実際には働いていない時間を特定しなければなりません。

 

そのスタッフが出勤したすべての日について、実際には働いていない時間を特定することになります。

 

働いていない時間を特定するためには、監視カメラに記録されている時間を利用することが考えられます。

 

また、GPS機能付きのタイムカードによって日々の打刻した場所がわかるようでしたら、打刻した場所から会社まで移動するのに必要な時間を計算することで、実際には働いていない時間を特定することも考えられます。

 

実際には働いていない時間を特定することができたならば、その時間を除外して、本来支払うべきだった賃金を計算します。そのうえで、実際に支払ってしまった賃金との差額の返還を求めることができます。

 

返還を求めることができる金額を計算することができたならば、スタッフと面談をするなどして返還を求めると良いと思います。

 

金額によっては弁護士に依頼をして対応をすることも考えられます。返還を請求できる金額や弁護士費用などを考慮したうえで、対応方針を考えると良いでしょう。 

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本記事は、ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」に寄せられた質問をもとに弁護士が作成した解説記事です。

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