長野県小布施町でインターン、資源回収拠点などを整備
そこで昨年、GIAを卒業した学生を積極的に地域の現場に送り込もうと、様々な座組で試行した。結果的に、まずは3人の卒業生が長野県小布施町で活動することとなった。
小布施町は筆者が代表理事を務める一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンが協働し、事業を行う自治体のひとつだ。
町が募集した「地域おこし協力隊インターン」として2人が昨年8月から3ヵ月間、現場で住み込みながら活動した。
もう1人は信州大学の学生で、現地に定期的に通いながらより長期的に地域と関わっている。具体的な活動としては、地元のスーパーと協力して、店舗の駐車場での資源回収を試験的に実施した。
これは資源回収強化のためにこれまで進めてきた施策を自治体主導で実施するものだが、インターン生は来店した地元住民の意向についてアンケート調査をし、その結果も活かしながらリユース品の交換会も企画した。
また、生ごみを堆肥にしたり、果樹農家から排出される剪定枝(せんていし)から炭をつくったりする施策にも参画した。
特に学生たちの成長を感じられたのは、生ごみを土に還すコンポストを製作するワークショップの運営。
近隣地域で活動する団体の協力を得て、廃棄されるリンゴ箱をもらいうけ、これを活用することで材料費を抑える工夫をした。
ワークショップ参加者へのプレゼンテーションも回を重ねるごとに磨きがかかり、住民の反応もよくなっていった。すべて任せても大丈夫だと思えるほどの成長ぶりだった。
島根県雲南市では2ヵ月で70基以上のコンポスト設置
もうひとつ、地域での取り組み事例を紹介したい。島根県雲南市には、昨年、4人のGIA卒業生を送り込んだ。
市民の寄付で発足した公益財団法人うんなんコミュニティ財団と協力して、住民へのごみ問題に対する啓発をしながら、家庭ごみの約4割を占める生ごみを土に還す装置「キエーロコンポスト」をつくり、地域に普及させるというミッションに4人は挑んだ。
市内には30の自主組織があり、各組織に紐づく交流センターがある。こうした地域内の拠点で20回以上の学習会を開き、市民に参加してもらい、たった2ヵ月間で70基以上のコンポストを市内に設置した。
以前からの取り組みの積み重ねもあり、雲南市は昨年6月、「雲南市脱炭素宣言」を表明、「ごみゼロ社会の実現」は政策の柱のひとつになっている。
雲南市はボトムアップ型の市民パワーが強いことから、地域の力で一気にコンポストを普及させることができた。それでも雪ダルマ式にコンポストを増やすことができたのは、学生たちが足を動かした成果だ。
市民とのコミュニケーションを大切にしてコンポストをつくる体験の機会を増やしていくと、口コミでコンポストの設置が広がっていった。
机上の空論ではなく、学生たちは地域を理解したいと思って、現場に飛び込んでいった。
市民の話を聴かせてもらい、自分たちも勉強しながら、その一方で自分たちの活動についてもしっかりと伝えて理解してもらえた。
生ごみを焼却しない社会は脱炭素社会の実現につながる。生ごみの重量の約8~9割は水分。これを燃やすには大量の化石燃料が必要であり、結果、大量の二酸化炭素を排出してしまう。
こうした現実を変えていくために、学生たちが地域社会の中で具体的なアクションをして成果を残したことに手応えを感じている。