前回は私的整理の4つの戦略のうち、「超長期による返済」を取り上げました。今回は「サービサーによる債権買い取り」について見ていきましょう。

企業再生に前向きに取り組むサービサーも存在

次は、②サービサーによる債権買い取りです。

 

サービサーというと、一般的には不良債権を安く買い叩いた後、窮状にある債務者の都合など一切お構いなく、強引にかつ非情に弁済を迫る冷酷な“ハゲタカ”のイメージを持っている人が多いかもしれません。確かに、一部の外資系サービサーの中に、そうした利益第一主義的な行動に走る業者がいるのは事実でしょう。

 

しかしサービサーの中には、事業の一つとして企業再生に前向きに取り組んでいるところも現れています。具体的なやり方としては、2通りのパターンが考えられます。

 

まず一つ目は、金融機関等の債権者が一方的にスポンサーに債権を売却するパターンです。売却は一般的に、複数の債権をまとめて譲渡するいわゆるバルクセールの形で行われます。ちなみに、“バルク”とは「かたまり」を意味しています。金融機関がサービサーへ安価で債権を売り渡した後、債務者がサービサーと交渉し、譲渡価格にプラスαした額の弁済をすることを条件に残債務の免除を受けるわけです。

 

もう一つは、債務者から提案して金融機関等の債権者の合意のもとに、売却するパターンです。譲渡後に、債務者がサービサーと交渉し、譲渡価格にプラスαした額の弁済をするのは前の場合と同じです。いずれの場合にも、サービサーに渡った債務は最終的に消滅することになります。

理解しておきたい「債権譲渡」の仕組み

サービサーによる債権買い取りについて、十分に理解するためには債権譲渡の基本的な仕組みを押さえておく必要があるでしょう。

 

まず、法律上、債権者は原則として債権を任意に譲渡できます。したがって、金融機関貸付債権を自由にサービサーに譲り渡すことができるわけです。ただし、債権譲渡には対抗要件が求められます。すなわち、法律上は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができないとされています(この通知または承諾を対抗要件といいます)。

 

債権譲渡の通知は譲渡人がしなければなりません。したがって、譲渡人以外の者が行った債権譲渡の通知は対抗要件を備えていないことになります(ただし、債権譲渡通知は、譲受人が譲渡人を代理して行うことは可能です)。

 

なお、債権の譲受人が債務者以外の第三者に債権譲渡を主張するためには、この債権譲渡通知を確定日付のある証書によって行わなければなりません。債権譲渡通知書がいた場合は、その後は譲渡先として記載されている者が債権者として扱われることになります。

 

次回は、私的整理の具体的な戦略③「資本的劣後ローンを使った債務超過の解消」について見ていきましょう。

本連載は、2014年10月25日刊行の書籍『引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

高山 義章

幻冬舎MC

中小企業の資金繰り悪化の対応策として時限立法として成立した法案、「金融円滑化法」が終了した。 現在のところ、これにより目立った動きはないものの、この先いつ債権者が債権処理に動き出してもおかしくはない。そうなれば…

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