「その場しのぎのリスケ」とは異なる
①超長期による返済は、債権者と債務者が返済条件について合意し直し、超長期で債務を返済する手法です。リスケジュール(リスケ)のいわば特別バージョンといえるでしょう。すなわち、通常のリスケは、返済期間が延長されるとしても5~7年程度です。この「超長期による返済」では、その期間をさらに延ばしてもらい、少なくとも10年以上にしてもらいます。
リスケそのものは、債務の減免を伴わないため、ただそれだけを行うのでは、財務面の改善効果はさほど期待できません。安易なリスケは経営者に甘えをもたらし、かえって事業再生の妨げになる危険性があります。
また「超長期による返済」は、その場しのぎのリスケとは異なり、経営者が確固たる意思をもって経営改善に取り組むことを前提として、初めて金融機関に認められるものです。したがって、金融機関を十分に納得させられるだけの綿密な再生計画を作成する必要があります。
そして、返済が猶予されている期間に再生計画に従って確実に事業を立て直し、赤字体質から黒字体質へと企業の中身を改善させ、持続的に得られるようになった収益によって債務を完済することを予定しているのです。
「肩代わり」の手法を活用して効率アップも可能
しかも、「超長期による返済」では、債権の格付けの見直しも同時に行われることが期待できます。金融機関は、一般に債権を、債務者の状況に応じて以下のような形で格付けしています。
①破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している。
②実質破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている。
③破綻懸念先 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画などの進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる。
④要注意先 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題がある、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題があるほか、業況が低調ないしは不安定または財務内容に問題があるなど、今後の管理に注意を要する。
※要注意先は、さらに以下のように要管理先とその他要注意先に分かれる。
●要管理先 要注意先のうち、3か月以上延滞または貸出条件を緩和しているもの(債権の全部または一部が金融再生法に定める要管理債権である)
●その他要注意先 要注意先のうち、要管理先以外のもの
⑤正常先 業績が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がない。
リスケ中の企業は債権の格付けが「要注意先」や「破綻懸念先」などに分類されているはずです。しかし、「超長期による返済」を認めてもらえれば、自社の格付けを、正常先に戻してもらえる可能性が生じるのです。そうなれば、既存の債務の弁済を猶予してもらえるだけでなく、新たな資金の融資を得ることも期待できるでしょう。
そして、その資金を利用することによって、事業の再建を大きく前進させることが可能となるのです。さらに、「超長期による返済」は、あわせて「肩代わり」の手法を活用することで、よりその効果をアップさせることもできます。
「肩代わり」とは、現在の金融機関から他の金融機関に借入れを付け替えることをいいます。メインバンクがある場合には、複数ある金融機関の借入れをメイン銀行がすべて肩代わりし、同時に毎月の返済額を減らすことになるでしょう。
このような「肩代わり」によって貸し手が絞られる結果、事業再生のために必要となる債権者との交渉をよりスムーズに進められるようになるはずです。