深刻化する「中小企業における人手不足」
詳しい説明の前に、まず、中小企業における人手不足の現状を具体的な数字で確認しておきましょう。
リクルートワークス研究所が2014年6月に、従業員30人以上の企業で採用活動をしている1000社にインターネットを通じて行った「人手不足の影響と対策に関する調査」によれば、正社員の中途採用に関して「人数を確保できた」と答えたのは67.9%、「確保できなかった」は32.1%に達しました。3社に1社が採用人数を確保できない状況にあるわけです。アルバイトとパートでも「確保できなかった」という回答が30.6%に上っており、小売業や飲食・サービス業では4割を超えています。しかも、人数が確保できない企業の52.7%は、人手不足が解消する見通しが「ない」と答えています。
同調査において女性や高齢者を積極的に採用対象としていた企業は約15%であることから、この調査結果からは若者を募集している企業が、その雇用ニーズを十分に満たすことができずにいる状況がうかがえます。
では、なぜ、これほど多くの企業が若者を確保することができないでいるのでしょうか。その背景には、ひと昔前の世代とは全く異なる、現代の若者の仕事に対する大きな意識の変化が関わっています。
現代の若者は「経済的な豊かさ」に魅力を感じない!?
まず、比較のために、現在、50代あるいは60代の人たちがまだ若かったときに、そもそもなぜ仕事をしたのか、働く目的は何だったのかを考えてみましょう。
おそらく、ほとんどの人は経済的に豊かな生活をするため、より具体的にいえば、一生懸命働き、お金を貯めて自動車を買い、マイホームを得ることが最も大きな目的だったはずです。
しかし、今の若者たちは、そのような経済的な豊かさに魅力を抱かなくなっています。若者の多くは自動車を持つことに関心がなく「若者の車離れ」という言葉が一般化しウィキペディア等の辞典に掲載されているほどです。
また、家についても同様に「若者のマイホーム離れ」が進んでおり、一生賃貸住宅でも構わないと思っている若者が増えているとの指摘があります(家については、少子化の中で「いずれは親の家を相続できる」という状況があることも影響しているかもしれません)。
そして、若者たちのこのような物質的な豊かさに対する無関心な傾向は、仕事に対する意識に関してもはっきりと表れています。【図表】に挙げたグラフは、日本生産性本部が毎年行っている「働くことの意識」に関する調査の中から、新入社員の「働く目的」についての調査結果をまとめたものです。グラフが示すように、「経済的に豊かな生活を送る」ことを働く目的としている者の割合は明らかに低下傾向にあります。
【図表 働く目的】