(※写真はイメージです/PIXTA)

佐藤良久/松村茉里/竹内宏明/森田努/川端ゆかり/高田江身子/杉森真哉/黒川玲子/中村剛/山田隆之氏の共著『そうだったのか! 相続のトリセツ』より一部を抜粋・再編集した本連載。ここでは、「空き家を相続したら?」「放置空き家を生み出さないためには?」についてみていきます。

「実家凍結問題」回避のための第二・第三の手段

②任意後見

 

老親の判断能力低下に伴う「実家凍結問題」を回避するための第二の手段として、「任意後見」が考えられます。

 

任意後見とは、委任者(老親)の判断能力が将来低下してしまった場合に備えて、事前に、委任者(老親)の生活、療養監護・財産管理を担ってくれる人(受任者)と委任契約を結んでおく、という仕組みです。

 

受任者は家族でも大丈夫ですし、司法書士や弁護士のような専門家が就くこともできます。なお契約は公正証書による必要があります。

 

任意後見契約によって、実家の処分権限を事前に受任者(子どもや専門家など)に与えておくことで、将来、委任者(老親)の判断能力が衰えてしまったとしても、受任者(子どもや専門家など)の判断で実家の売却を進めることができるようになります。

 

先に挙げた家族信託との違いとしては、主に以下の点があります。

 

・家族信託は原則として契約締結後すぐに受託者(子ども)による財産管理が開始されます。任意後見は原則として委託者(老親)の判断能力が将来低下したタイミングで開始となります。

 

・家族信託は原則として裁判所の関与はありません。任意後見は、開始の時点で裁判所から選任された「任意後見監督人」が就き、裁判所の監督下に置かれます。

 

・家族信託は財産管理のみに関する契約となります。任意後見は、財産管理にとどまらず委任者(老親)の生活、療養監護に関する代理権まで与えることが可能です。

 

家族信託と任意後見のどちらを選択するべきか、あるいは併用するべきかは、そのときの状況を踏まえて慎重に判断をするべきでしょう。

 

③遺言書の作成

 

「実家凍結問題」が起こるパターンとして、親の死亡後に遺産相続がまとまらないというケースもよく見受けられます。

 

両親亡きあと、空き家となった実家は、将来にわたって誰も住む予定がないのであれば、売却してしまうのが理想的です。しかし、不動産を亡くなった方名義のまま売却することはできません。

 

亡くなった親名義の不動産を売却するには、その前提として、相続人への不動産名義変更(相続登記)が必要です。

 

不動産名義変更(相続登記)をするにあたって、誰が名義を引き継ぐか(実家を相続するか)を決める必要がありますが、このときに遺言書があると非常にスムーズです。

次ページ「遺言書さえ残っていれば……」

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『そうだったのか! 相続のトリセツ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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