(写真はイメージです/PIXTA)

まさに賃上げブームとなった今年の春闘。「問題は、今後も賃上げが続くかだ」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏はいいます。みていきましょう。

【関連記事】

求められる将来世代の経済基盤の安定化…非正規雇用が生む経済格差と家族形成格差

 春闘賃上げ率は30年ぶりの高水準へ

2023年の春闘賃上げ率は約30年ぶりの高さに

連合が4/13に公表した「2023春季生活闘争 第4回回答集計結果」によれば、2023年の平均賃上げ率は3.69%と30年ぶりの高さとなった(図1)

 

【図1】
【図1】

 

日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」では、2023 年の春闘賃上げ率(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)の予想が2023年1月調査の平均2.85%から3月調査では平均3.05%へと引き上げられたが、例年8月頃に厚生労働省から公表される最終結果ではこれを上回る伸びとなり、1994年(3.13%)以来の3%台となることがほぼ確実となった。1980年以降で春闘賃上げ率が前年に比べて最も大きく改善したのは、1981年の0.94%(1980年:6.74%→1981年:7.68%)だった*1が、2023年の春闘賃上げ率の前年(2.20%)からの改善幅は1%を超える可能性が高い。

 

春闘賃上げ率の結果は、基本的には賃金総額の約4分の3を占める所定内給与に反映されることになる。ただし、春闘賃上げ率には1.8%程度とされる定期昇給分が含まれており、労働者の平均賃金に影響するのは定期昇給分を除いたベースアップである。

 

毎月勤労統計(厚生労働省)の所定内給与は、2022年初めから概ね前年比で1%台の伸びが続いているが、2022年の春闘賃上げ率が2.20%(ベースアップでは0.4%程度)だったことを踏まえると、高すぎるように思われる。これは、毎月勤労統計が毎年1月にサンプル入れ替え(30人以上規模の事業所について、全体の3分の1ずつ調査対象事業所を入れ替える)、数年に一度、「経済センサス-基礎調査」等の結果(産業・規模別の労働者数)を反映させるベンチマーク更新を行うことが影響している。

 

2022年1月はサンプル入れ替えと、2018年1月以来4年ぶりのベンチマーク更新が同時に実施された。サンプル入れ替え・ベンチマーク更新前後の賃金を比較すると、新ベースの所定内給与は旧ベースよりも1286円(新旧差0.5%)高かった*2。つまり、2022年1月から12月の所定内給与の伸びは実態よりも0.5%程度高くなっていた(図2)

 

【図2】
【図2】

 

毎月勤労統計の所定内給与は、2021年の前年比0.2%から2022年には同1.1%へと伸びを高めたが、そのかなりの部分はサンプル入れ替えとベンチマーク更新による断層によって説明できる。同様に、2022年の現金給与総額は前年比2.0%と2021年の同0.3%から伸びを大きく高めたが、実態としては1%台半ばの伸びだったと考えられる。

 

サンプル入れ替えは2023年1月にも実施されたが、入れ替え前後の新旧差は353円(0.1%)と小さかった*3。2023年1月以降の所定内給与の伸びは実態を反映したものと判断される。

 

*1:1965年の調査開始以降では、第一次石油危機のインフレ期にあたる1974年に前年差12.8%(1973年:20.1%→1974年:32.9%)が最高となっている。

*2:現金給与総額の新旧差は0.4%

*3:現金給与総額の新旧差は0.2%

 

注目のセミナー情報

​​【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術

 

【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術

次ページ実質賃金上昇率のプラス転化は2023年度後半か

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月14日に公開したレポートを転載したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧