(※画像はイメージです/PIXTA)

連鎖販売取引(マルチ商法)国内最大手の「アムウェイ」に対し消費者庁が2022年10月から下していた「6ヵ月間取引停止」の行政処分が今日から解除されます。本記事では、アムウェイのみならず古くからトラブルがあとを絶たない「連鎖販売取引」のしくみとそれ自体が抱える根本的な問題について、関連法令にも触れながら解説します。

古くから社会問題に…「連鎖販売取引」とは

まず、「連鎖販売取引」とはどのようなものか、解説します。

 

消費者庁は、連鎖販売取引を以下のように定義しています。

 

「人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引」

消費者庁HPより

 

 

たとえば、AさんがBさんを販売員として勧誘し、BさんがCさんを販売員として勧誘し、…というのを連鎖的に繰り返していくものです。

 

ポイントは、その過程において「特定利益」と「特定負担」が伴われることです。

 

「特定利益」とは、他の人を勧誘して商品を販売すると紹介料等が得られることをさします。

 

上記の例でいえば、AさんがBさんを勧誘したことによってAさんに紹介料が入り、BさんがCさんを勧誘したことによってAさんとBさんに紹介料が入るというしくみです。

 

また、「特定負担」とは、取引を行うための条件として「入会金」、「保証金」、「サンプル商品」、「商品」など、なんらかの金銭負担を行うことが条件となっていることをさします。

 

AさんがBさんを勧誘して商品を販売するには、Aさんはお金を払って商品を仕入れなければなりません。また、BさんがCさんを勧誘して商品を販売する場合も同様です。これが「特定負担」です。

連鎖販売取引に対する法規制

連鎖販売取引に対しては、特定商取引法により非常に厳しい規制が設けられています。なぜなら、後述するように、その性質上、強引な勧誘等が行われやすいからです。

 

◆連鎖販売取引の勧誘に際しての禁止事項

たとえば、勧誘を行う場合の禁止事項は以下の通りです。

 

・商品の品質・性能、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項等について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること

・相手方を威迫して困惑させること

・勧誘目的を告げずに誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘を行うこと

 

つまり、勧誘をする際は、原則として、勧誘しようとする相手に対し、「連鎖販売取引の勧誘である」ということをはっきりと明示しなければなりません。

 

「だまし討ち」はNGだということです。

 

また、相手がそこから逃げられない状態を作り出すことも禁止されています。

 

なお、アムウェイが取引停止処分を受けた直接の原因となった事件は、マッチングアプリを利用して、アムウェイの勧誘であることを告げずに勧誘を行ったことでした。

 

◆連鎖販売取引のその他の規律

特定商取引法は、この他にも、以下の定めを置いています。

 

・一度断られたら相手に対する勧誘の禁止

・契約時の書面交付義務

・クーリングオフ制度

・クーリングオフ後の中途解約権・返品等のルール

 

なお、日本アムウェイも、公式HPYouTubeチャンネルで強引な勧誘を戒めており、販売行為にありがちな「ノルマ」や「在庫の抱え込み」について明確に「してはならない」と表明しています。

 

また、「法令順守」を強調し、特定商取引法の規制について説明を行い、もしも強引な勧誘等があった場合には通報するよう呼び掛けてもいます。

 

今回の取引停止処分についても、公式HPでのコメントにおいて、「一部会員の違法行為」と記載しており、あくまでも組織的なものではないことを強調しています。

 

しかし、法令を遵守していることと、連鎖販売取引という取引形態に問題があるかどうかということは、まったく別の問題です。

 

アムウェイをはじめとする連鎖販売取引業者については、古くから勧誘方法等をめぐるトラブルが絶えず、社会問題となっています。そもそも法令順守以前に、連鎖販売取引というビジネスモデル自体がトラブルの温床となっているといわざるをえないのです。

次ページ連鎖販売取引のトラブルが絶えない根源的理由

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