前回は、「都市部の乾燥化」時代に求められる建物の環境改善について説明しました。今回は、学術的な面から見る「快適な住まい環境」を取り上げます。

国土交通省主導の「研究成果」をまとめた書籍

前回の朝日新聞の記事でもありましたが、乾燥しすぎた住環境は、体感温度が下がり、インフルエンザ等の病気にもかかりやすくなります。

 

こうした住まいと健康の関係について、2013年6月、『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』(健康維持増進住宅研究委員会/健康維持増進住宅研究コンソーシアム編著、技報堂出版発行)という書籍が発売になりました。

 

この本は国土交通省の主導で進められた健康維持増進住宅研究委員会等の研究成果をもとにして企画・編集されたものです。

適切な住宅を実現するために重要な「エビデンス」

「序文」の一部を抜粋します。

 

「日本人は一日のうち約6割の時間を住宅内で過ごすといわれている。その室内では建築内装仕上げや家具などから化学物質が放散され、また生活に伴って水蒸気が発生するため、気密性の高い住宅で適切に換気されていない場合には室内空気が汚染され、結露が発生してカビやダニ等の微生物の繁殖を許すことになる。

 

(中略)どのような室内環境の要因が健康を阻害する可能性があり、どの程度の環境レベルを維持すべきか、ということを、科学的知見に基づいたエビデンス(証拠、根拠:住まい手にとって、少しでも健康を阻害しない環境を実現するための情報)として示すことは、健康で快適に暮らす上で、また適切な住宅を実現するために重要である」

 

この本の中には、私たちの考え方を裏づける「エビデンス」がいくつもあります。その一部を次回から紹介いたします。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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