学術的に導き出された根拠とは?
前回の続きです。『健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集』(健康維持増進住宅研究委員会/健康維持増進住宅研究コンソーシアム編著、技報堂出版発行)によると、湿度の上限は「温熱快適性」、「カビの生育」、「ダニの生育」から、下限は「人の生理反応」、「インフルエンザウィルス生存率」から導き出すとしています。
「温熱快適性」
人は低温時の湿度の変化はほとんど気にしません。しかし、高温時は発汗の妨げになり多湿を不快に感じます。その上限は70%前後です。
「カビの生育」
カビ成長速度は、湿度が100%のときを基準とすると、75 %だと半分程度になり、55%以下だとほとんど成長しなくなります。
「ダニの生育」
ダニは湿度が70%以上になると増え始め、50%以下になると半減します。
「人の生理反応」
人の口の中が乾燥を起こさない湿度の下限は、気温が20℃だと50%、25℃だと40%です。また、眼球は湿度が30%以下になると乾燥し始めるとしています。
「インフルエンザウィルス生存率」
インフルエンザウィルスは、湿度が50%以上になると急激に生存率が低下し、35%以下になると23時間後の生存率は14%から22%と高くなります。つまりウィルスは、湿度が低いほど生存率が高くなります。
体に悪影響を及ぼす「エアコンに頼った暮らし」
このような根拠から同書では湿度の適正範囲を40%から70%としています。エアコンの影響についても指摘しています。
いわゆる冷房病とは、過激な冷房によって両足または全身の冷感、倦怠感、疲労感、上気道炎症状、胃腸障害、頭痛、関節痛、神経痛などの身体症状がみられることです。
同書では、室温が27℃以下になると冷房病がみられるようになり、25℃以下になると明らかに増加する、とあります。エアコンに頼った暮らしは体にまで影響を及ぼすというものです。
自然素材により、湿度の変化を抑制し、快適な住環境を作っていくことの重要性が同書からも読み取れます。