創業150年「手づくり茶筒」一筋の老舗の“六代目当主”が語る…商品が長く深く「愛着」を持ってもらえる理由

創業150年「手づくり茶筒」一筋の老舗の“六代目当主”が語る…商品が長く深く「愛着」を持ってもらえる理由
(※写真はイメージです/PIXTA)

明治8年創業の「手づくり茶筒」の老舗「開化堂」は、現在までの約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、商う製品が人の心に深く長く残り、愛着を持ってもらえるための「伝え方」について語ります。

無理に買わせない、説得しない

お客様との間で、推し・推されるという関係性を育てていきたいと思う際、その間柄を一気に壊しかねないのが、売り方の問題だと思います。

 

僕は、「ビジネス」「商業的」「マーケティング」という言い方があまり好きではありません。なぜかというと、よくそういうワードが出たときに、少しネガティブなイメージがその言葉に乗ることがあるからです。

 

「ビジネス」「商業的」という言葉は売る側からの視点が強く感じられ、「マーケティング」という戦略で売ることで作為的にお客様からお金を奪う、という感覚がどうにもつきまといます。

 

それが、僕の目指している、お客様との間での同志のような関係性とは異なるのです。

 

では、同志という関係性の中で行なわれる商いとは何なのかといえば、それは「ギブ&テイク」ではないかと僕は思います。

 

たとえば、昔のお商売には、「損して得とれ」という考え方がありました。

 

「去年、この人から得をとらしてもらったから、今年はこの人に得をとっといてもらおう」

 

「あの人に得をあげたうえで、最終的に自分たちのお商売もプラスで終わったらいいよね」

 

というような感覚が共通してあったのです。

 

もちろん、損ばかりではこちら側も食べてはいけないわけですが、これが売上至上主義になって奪うことばかりになると、「テイク」しかなくなります。

 

すると、不思議なもので、そういう場所からは人もお金も逃げていってしまうのです。

 

ですから、自分たちの生活のための売上はちゃんと確保しながらも、お客様に「得したな」と思っていただけなくてはいけません。

 

そのためには何が必要か――。「売ろうとしない」ことなのです。

 

開化堂の茶筒は、サイズにもよりますが、1万円台の中盤〜3万円台まであります。

 

僕としては、施している工程の数、かけている職人のエネルギーもあるので、自分たちを安く見せるのでもなく、高く見せるのでもない形が、現在の値段だと思っています。

 

ある人はこれを高いと感じ、また別の人は安いと感じるでしょう。

 

そこで、少しでも「高いな」と感じている人には買わせてはいけないし、説得しようとしてもいけません。どれだけうまく説得しようとも、それは回りまわって、お客様の中で「買って損した」「無理に買わされた」というネガティブな思いとなってしまうからです。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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