京都の小さな老舗の「茶筒」が“イギリス進出”…認知度なしからわずか9年で「国立博物館の永久展示品」にまでなったワケ

京都の小さな老舗の「茶筒」が“イギリス進出”…認知度なしからわずか9年で「国立博物館の永久展示品」にまでなったワケ
(※写真:開化堂の製品)

明治8年創業の「手づくり茶筒」の老舗「開化堂」は、現在までの約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、同社の「茶筒」がイギリスで受け入れられ、ついには同国の国立博物館の「永久保存品」になるまでに至った経緯について語ります。

すぐに撤退では、家族になれない

こうして幸先のよいスタートを切ったかに見えたイギリスへの展開でしたが、進出してから数年の販売状況というのは簡単なものではありませんでした。

 

最初にロンドンに行ってからは、毎年赴くようにしていましたが、2年目からはホテルも自分でちゃんと取り、滞在費用も大きくかかってくる中で、3年目、4年目と重ねていくと、「今年は、きてよかったのかな……」と感じてしまうことも出てきました。

 

ポストカード・ティーズさんも大きな紅茶屋さんではありませんので、どんどん新しいお客様が増えるわけではありません。それに対して、開化堂も同じ茶筒を持っていくわけですから、簡単に右肩上がりの売れ行きとはいかなかったのです。

 

ただ、そんな迷いが生じるときでも、僕は毎年ロンドンに行くことをやめませんでした。

 

というのも、やっぱり一度や二度行ったぐらいでは、本当の関係性は築けないから。

 

せっかく声をかけてもらえたのに、少しつまずいて帰ってしまうようでは、私たち自身も、その場所にちゃんと根づいて受け入れてもらうことができません。

 

だから、むしろ難しい状況の中で、互いにそこでコストをかけながら一緒に続けていく。

 

そうするうちに、より一層、信頼の感覚が芽生えていく。

 

ちょっとよくなったり、悪くなったりというアップダウンもある中だからこそ、家族のような関係性が倍増していくこともあるわけです。

 

日本の企業さんの中には、海外の展示会に出てゴール、というような形になってしまっているところもあるように見受けられますが、本当はそこからがスタートになります。

 

だから、日本だけでなく世界中に家族をつくっていく。そのためにも、すぐに利益先行で考えるのではなく、長期的なスパンで考える。

 

そうしてイギリスの家族とも呼べる方々と地道に茶筒の展開を続け、ポストカード・ティーズさんの薦めもあった結果、イギリスでの展開から9年後の2014年、開化堂の茶筒はイギリスの「ヴィクトリア&アルバートミュージアム」という、工芸やデザインの分野で世界の三本の指に入るような国立博物館に、パーマネントコレクション(永久展示品)として収蔵される、という評価をいただくところまで受け入れられることができました。

 

海外においても、すべては信頼関係が土台です。不慣れな土地で、現地事情を知る人たちに何を教えていただき、どう盛り立ててもらえるか。当然、少し売上状況が悪くなったからといって、説明不十分な形で撤退してしまえば、密な信頼は育めません。

 

だからこそ、国境を越えて苦楽をともに味わえるような、家族付き合いできる人柄の相手先を見つけ、ビジネスという以上に人として一緒に歩む。

 

それが、結果的に海外での商いという観点から見ても、自分たちを足元から支えてくれるものになるのだと思います。

 

 

八木 隆裕

開化堂

六代目当主

 

共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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